「人類の未来のために脱炭素社会の実現を目指す」というビジョンに異論はないだろう。その一方で、急激な変化が原油価格の高騰、LNG争奪をはじめ世界同時多発的なエネルギー危機を引き起こしている。「10~20年というレンジで考えたとき、ハイブリッド車の効果を再評価すべきだ」と自動車業界に詳しいマーケティング/ブランディングコンサルタントの山崎明氏は指摘する──。

「ハイブリッドは時代遅れの技術」は本当か?

COP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)が開催され、脱炭素化の話題がまた盛り上がっている。

脱炭素の話になると決まって出てくるのが、「日本の自動車メーカーは脱炭素に消極的だ」「遅れている」という議論だ。そういう主張をする人はテスラが最も進んでいて、欧州、特にドイツの自動車会社がそれに続いているという認識のようだ。

日本のメーカーが遅れていると言う人の主たる論点は、日本のメーカーはハイブリッドには力を入れているがEVには消極的というものだ。ハイブリッドはもう時代遅れの技術であって、EVこそ最新の技術だ、という主張だ。だからEVを積極的に売ろうとしない日本のメーカーは取り残される、という。

果たして本当だろうか。ここでハイブリッドとはどういう技術なのかをあらためて考察してみたい。

充電中のプラグハイブリッドカー
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ハイブリッドの方式は大きく2つある

ハイブリッドとは、異種のものを組み合わせた仕組みをいい、自動車の世界では内燃機関と電気モーターを組み合わせたものを一般的にハイブリッドと呼んでいる(以下、内燃機関をエンジンと記す。ちなみに英語ではエンジンとモーターは同じ意味で、電気モーターをエンジンと言うこともある)。

ハイブリッドといってもその仕組みにはさまざまな種類がある。大きく分けると「シリーズハイブリッド」と「パラレルハイブリッド」という2つの考え方がある。

シリーズハイブリッドとはエンジンで発電し、その電気で駆動用電気モーターを回すというものだ。パラレルハイブリッドとはエンジンによる駆動と電気モーターによる駆動を切り替えて走る方式のことをいう。

一般的には、電動は低速時に効率に優れ、高速時はエンジンのほうが優れているためそのように切り替えることが多い。さらには発進時のみ電気モーターを補助的に使う簡便なマイルドハイブリッドもハイブリッドの一種として扱われている。