②ホンダ・フィット
次に試乗したのがフィットである。フィットはノートと違って、ガソリン車の運転感覚に近いフィーリングを出そうとしているように感じられ、加速感も穏やかで温和な顔つきのスタイリングとマッチしたものであった。室内も明るく広く、個人的に内外装のデザインが最も気に入ったのがこの車である。
燃費は往路25.5km/l、復路は30.8km/lと大台に乗せてきた。ノートにくらべ穏やかな性格な車のため、運転も穏やかになったのも貢献しているかもしれない。
③トヨタ・ヤリス
最後のヤリスであるが、欧州の小型車にもまったく引けを取らない運動性能で、とても運転を楽しめたのが印象に残っている。動力性能も十分以上で、トヨタのハイブリッドで運転が楽しい、と心底思えたのは初めての経験である。
驚いたのは燃費だ。それなりに楽しんで運転したにもかかわらず、往路31.9km/l、復路はなんと38.1km/lという驚異的な数字をたたき出したのである。
これは高度な制御により駆動を最適化しているトヨタハイブリッドシステムの優位性がはっきり出た結果だと思う。藤沢―東京間でも、往復とも30km/l以上の数字が出ている。
合計350kmの試乗が終わって給油したら10リットル少々しか入らなかったのは感動的ですらあった。通常のガソリン車であれば倍近い燃料が必要だったと思う。
「脱炭素」視点で現状最も効果が高いものは…
3車を試乗して、燃費ではヤリスが断トツではあったが、ノートもフィットも相当に優れた数値であり、乗り味もそれぞれ個性があって非常に楽しめた。車としての出来も良く、どの車も自信を持ってお勧めできるものだった。
現在、日本ではハイブリッド車は200万円少々で手に入る。使い勝手もガソリンを入れさえすれば良く、しかもなかなか減らない。一般の人が買うのに障害は非常に少ない。
一方、EVは高価なうえ、自宅に充電設備を設置できる人はいいが、そうでない人が購入するのは非常に厳しいだろう。一般の急速充電器では、30分充電しても100km程度の航続距離分しか充電できないためだ。もちろん遠距離ドライブは100km走るごとに30分の充電を強いられる。
そのうえ火力発電がメインの現状では、リチウムイオン電池の製造過程でCO2を大量に排出するため、EVは一般的に考えられているほど環境に優しくないのだ。
EV化を推進するボルボが昨年発表したデータによれば、現状の世界の発電状況では、XC40のEVモデル、XC40 RechargeのCO2排出量がガソリン車のXC40と同じになるのは14.6万km走行後だという。日本のハイブリッドとの比較であれば、おそらく25万km以上走行しないとCO2削減効果が得られないであろう。
欧州各国は巨額の補助金を出してEV普及に努め、ドイツでは100万円を超える補助金(=税金)や優遇策で販売の10%以上をEVにすることに成功しているが、10%少々をEV化しても効果はたかがしれている。