「動物の骨」を使って博物館の面白さを発信している人がいる。国立科学博物館の元研究員・森健人さんは、3Dプリンタで標本のレプリカを作り、それを広く販売したり、路上や公園で披露したりする「路上博物館」の館長だ。フリーライターの川内イオさんが取材した――。

※本稿は、川内イオ『ウルトラニッチ 小さな発見から始まるモノづくりのヒント』(freee出版)の一部を再編集したものです。

パソコンに向かう男性
写真=筆者撮影
「路上博物館」館長の森健人さん

動物の頭蓋骨が並ぶ“不思議なアトリエ”

千葉県松戸市の閑静な住宅街のなかにある大きな二世帯住宅。

現在はシェアアトリエとして活用されているその一室を訪ねると、雑然とした部屋のなかに動物の頭蓋骨がいくつも置かれていた。もし、泥棒が深夜なにも知らずにこの部屋に忍び込んだら、懐中電灯の灯りに浮かび上がる骨を見て悲鳴を上げるかもしれない。

これらは本物の白骨ではなく、アトリエの3Dプリンタで出力されたもの。素人目にはなんの骨か判別がつかないが、ライオン、キリン、パンダなどの骨が、本物とほとんど変わらないほど精巧なレプリカになっている。

棚に並ぶ骨格標本
写真=筆者撮影
アトリエに並ぶ動物標本のレプリカ。まるで本物のようだ。

この不思議なアトリエを「実験拠点」としているのが、一般社団法人「路上博物館」。代表と館長を務めるのは、国立科学博物館が設立した科学系博物館イノベーションセンターの元職員、森健人さんだ。

この、3Dプリンタで成型した動物の骨格標本をミュージアムグッズとして販売するという前代未聞のモノづくりに挑む男の野望とは――。