事実とすれば日本のほぼ全土が射程圏に入ることに
9月13日に北朝鮮の国営メディアが「11日と12日に新型の長距離巡航ミサイルの発射実験を実施し、成功した」と報じたのに続いて、15日には北朝鮮が短距離弾道ミサイルを日本海に向けて発射した。
制裁を続ける日米韓を中心とする国際社会に対する挑戦状だ。ミサイルの性能をアピールすることで、今後の交渉での制裁解除の「カード」にするつもりなのだろう。
確かに北朝鮮のミサイル発射の技術は向上している。ミサイルは、放物線を描いて飛ぶ「弾道ミサイル」と、飛行機のように水平に飛ぶ「巡航ミサイル」の2つに分けられる。11日と12日に発射された新型の長距離巡航ミサイルは、低い高度で飛ぶため、レーダーで捉えるのが難しい。北朝鮮は「1500キロ先の目標に命中した」と発表したが、これが事実とすれば日本のほぼ全土が射程圏に入ることになる。
一方。15日の短距離弾道ミサイルは、落下時に空気抵抗を利用して変則的な軌道を描くため、落下予測が難しい。日本のミサイル防衛はイージス艦とPAC3の二段構えだが、高度が低いためイージス艦では迎撃できず、PAC3で対応する必要がある。
北朝鮮のミサイルにどう備えるのか。自民党の総裁選挙(9月17日告示、29日投開票)では、安全保障政策も議題にするべきだろう。
敵基地攻撃能力の保有か、それとも抑止力の向上か
総裁選への出馬を正式に表明した各候補は、北朝鮮のミサイル発射に対してどんな意見を述べているのか。
前政調会長の岸田文雄氏は、敵基地攻撃能力の保有も含め、防衛能力の向上を検討する考えを示している。敵基地攻撃能力とはミサイル発射などを阻止するために敵の基地を直接破壊できる能力を指す。念頭にあるのは北朝鮮によるミサイル攻撃だ。敵の攻撃を察知してすぐにたたくわけだが、事前に察知するためには高度な軍事技術が必要になる。攻撃を受けたときに初めて防衛力を行使できるという、日本の専守防衛の議論にも触れるだけに慎重な意見も出ている。
前総務相の高市早苗氏も敵基地攻撃能力の保有に肯定的で、「精密誘導ミサイルを保有したい」と話し、「敵基地を無力化するためのサイバー攻撃も可能にすべきで、そのための法整備を検討したい」と述べた。
岸田氏や高市氏に対し、防衛相を経験している行政・規制改革相の河野太郎氏は敵基地攻撃能力の導入について、「敵基地攻撃能力は昭和の概念。抑止力は日米同盟で高めていく。短絡的な議論は避けるべきだ」と主張している。