「巡航ミサイル」の発射は禁止されていない

朝鮮中央通信によると、新型長距離巡航ミサイルの開発は北朝鮮国防科学院によって2年前から進められてきた。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記も今年1月、「中長距離の巡航ミサイルを開発した」と語っていた。ナンバー2の実力者と言われる実妹の金与正(キム・ヨジョン)・朝鮮労働党中央委員会副部長は8月の米韓合同軍事演習に対し、「信頼回復を望む北と南の首脳の意思を損ない、行く末を曇らせる。必ずや、代価を払うことになる」と強く抗議していた。

金与正氏の指摘した「代価」が、新型巡航ミサイル発射実験なのだろうか。たしかにそのタイミングは、日米韓3カ国の東京協議(9月14日)の直前となっている。

北朝鮮はトランプ政権下で行ったようにアメリカと対等に交渉し、何とか制裁の解除に漕ぎつけようと必死なのである。そのためにまず新型長距離巡航ミサイルの開発を明かし、次に8月の米韓合同軍事演習に反発し、そして今回のミサイル発射実験の公表へと動いた。

巡航ミサイルは核弾頭を小型化することができれば、核の搭載も可能となり、大きな脅威となる。国連安全保障理事会の北朝鮮制裁決議では巡航ミサイルの発射は禁止されていない。北朝鮮はそこに目を付けたのだろう。北朝鮮は思惑に沿って計画通りに行動している。その姿勢には北朝鮮特有の狡猾さが滲み出ている。

アメリカは「発射成功」とは断定していない

「事実であれば」と書いたように、いまのところ北朝鮮が新型ミサイルの開発に成功したとは断定できない。

アメリカは監視衛星と独自の情報網によって常に北朝鮮の動きを捉えている。それにもかかわらず、アメリカは「発射成功」とは断定していない。北朝鮮国内を飛行させたといっても、約2時間の飛行を追跡できないはずがない。隣国の韓国も確かな情報を把握できていない。日本の加藤勝信官房長官も記者会見で「事実とすれば」と繰り返していた。新型長距離巡航ミサイルの発射実験の「成功」は怪しい。

北朝鮮もこれでは揺さぶりや脅しにならないと判断し、15日になって、今度は短距離弾道ミサイルを日本海に撃ち込んだのだろう。しかもその弾道ミサイルは変則軌道を持つ、迎撃の難しいミサイルだった。

15日の防衛省の発表によれば、15日午後0時32分ごろと37分ごろに北朝鮮は内陸部から日本海に向けて少なくとも2発の弾道ミサイルを発射した。飛行距離は750キロ、最高高度は50キロだった。日本が主権的権利を持つ排他的経済水域(EEZ)内に落下した。このミサイルはロシア製のイスカンデル型の改良版とみられている。