「総裁選では岸田氏に勝てる」という計算か

9月1日午前、菅義偉首相(72)が記者団の質問に対し、「最優先は新型コロナ対策だ。いまのような厳しい状況では、衆院の解散はできない」と述べた。自民党総裁選(9月17日告示、29日投開票)にも触れ、「総裁選の先送りは考えていない」と説明した。

衆院解散や自民党総裁選について、記者団の質問に答える菅義偉首相=2021年9月1日午前、首相官邸
衆院解散や自民党総裁選について、記者団の質問に答える菅義偉首相=2021年9月1日午前、首相官邸(写真=時事通信フォト)

これは8月31日夜の毎日新聞デジタルの特報「首相、9月中旬解散意向」を否定するものだ。毎日新聞は「菅首相は自民党役員人事と内閣改造を来週行い、9月中旬に衆院解散に踏み切る意向だ。複数の政権幹部が31日、明らかにした。自民党総裁選は衆院選後に先送りする。首相は衆院選の日程を10月5日公示、17日投開票とする案を検討している」と報じていた。

菅首相はこれまでも「感染対策が最優先」と度々強調してきたが、その言葉とは裏腹に感染が拡大したことで、内閣支持率は低迷している。今回、毎日新聞が「複数の政権幹部が明らかにした」と書いたところなどから判断すると、菅首相は総裁選を先送りして衆院解散に踏み切るという選択肢も検討していたのだろう。

総裁選にはすでに岸田文雄・前政調会長(64)が出馬を表明し、2人の対決の構図が固まりつつある。早期の解散を否定したということは、菅首相はこのまま総裁選を行っても、岸田氏に勝てると考えたのだろう。

岸田氏は「自民党を若返らせる」と明言

「国民の声に耳を澄まし、政治生命をかけ、新しい政治の選択を示していく」
「党役員に若手を大胆に登用し、自民党を若返らせる」

岸田文雄・前政調会長は8月26日の記者会見でこう述べ、自民党総裁選への出馬を正式に表明した。

明らかに、独断専行に走る菅首相と長きにわたって幹事長を務める二階俊博氏(82)に対する挑戦のメッセージである。

岸田氏は負ければ、自民党内で確実に干される。言葉だけでなく、その表情にも覚悟が見える。沙鴎一歩は岸田氏という政治家を見直した。

岸田氏は「菅首相の無投票再選を食い止めなければならない」と主張する若手の声に押され、総裁選への出馬を決めたという。記者会見では幹事長など党役員の任期を「1期1年連続3期まで」に減らすことや、政治とカネの問題を解決していくことを掲げた。どれも岸田派(46人)の中堅・若手の国会議員が求めている政策だ。

菅首相は新型コロナ対策に何度もつまずき、その結果、支持率は低空飛行を続けている。自民党の若手からは衆参3選挙、3知事選、都議選、横浜市長選での相次ぐ敗北に不満の声が上っている。岸田氏はそんな批判を取り込んで獲得票に結び付ける作戦だろう。

自民党総裁選は、党内あげての「若手vs.古参」の戦いとなる公算が高い。