「史上最強の官房長官」だったが、首相ではマイナスばかり
菅首相は側近や専門家の意見を聞かず、新型コロナの感染急拡大を無視するかのように東京五輪(7月23日~8月8日)と東京パラリンピック(8月24日~9月5日)の開催に踏み切った。自分が正しいと考えると、周囲の意見を聞こうとしない。おのれの考えに何ら疑問を持たずに突き進み、失敗して世論の批判を浴びている。
前首相の安倍晋三氏(66)のもとでのナンバー2という立場では「史上最強の官房長官」との評価はあったが、首相となってからは評価は下がる一方である。
一方、二階氏は歴代最長の5年以上にわたって幹事長を務めている。その間、政治とカネの問題をめぐっては「随分、きれいになってきている」との問題発言もあった。自民党の中堅・若手国会議員からは「二階幹事長が自民党に対する逆風の発生源になっている」との批判の声が上がっている。
「自民党は新しい総裁のもとで政策を実行していくべき」
菅首相は総裁選や衆院選に先立ち、9月6日にも二階氏の幹事長の交代をはじめ、党役員人事と小規模な内閣改造を実施する意向があると時事通信など複数のメディアが報じている。
内閣支持率の低さと中堅・若手国会議員からの批判に対し、局面を打開していく作戦とみられるが、ここに来て人事権を振り回すやり方は姑息だ。菅首相という人間は、自らの続投のためなら手段を選ばないのである。それは一人の政治家としては許されるのかもしれないが、日本のトップとしてはいかがなものだろうか。
実際、自民党の中谷元・元防衛相は9月1日、谷垣グループの会合で「総裁選日程はもう決まっている。正々堂々と行い、自民党は新しい総裁のもとで政策を実行していくべきだ」「人事で『釣る』という方法もあるが、党員や国民はおそらく辟易するのではないか」と述べ、菅首相の再選に否定的な考えを示している。
自民党内で最大派閥の細田派(96人)に強い影響力を持つ安倍氏と、第2派閥の麻生派(53人)を率いる麻生太郎・副総理兼財務相(80)は菅首相の再選続投を支持している。党内随一の結束力を誇る二階派(47人)も二階氏を中心に菅首相を支持する構えだ。竹下派(52人)も石原派(10人)も菅首相支持に傾いている。いまのところ、菅首相が有利なようではある。