自民党の若返りは日本を牽引するうえで欠かせない

朝日社説はこうも指摘する。

「菅政権の1年で問われるべきは、コロナ対応だけではない。学問の自由にもかかわる日本学術会議の会員候補6人の任命拒否は、いまだ撤回されていない。安倍氏側からの前夜祭への費用補填が明らかになった『桜を見る会』をめぐる問題や、自ら命を絶った元近畿財務局職員の遺族が公文書改ざんの真相解明を求めている森友問題など、前政権のウミを取り除こうとしない姿勢は、政治への信頼回復を阻んでいる」

日本学術会議の扱い、桜を見る会の問題、森友学園の事件など新型コロナの感染拡大で忘れられつつあるが、これらの事実は自民党総裁選後の衆院総選挙にとって重要だろう。決して忘れてはいけない。

最後に朝日社説は「前回のような派閥中心の多数派工作が繰り返されるなら、国民との乖離かいりは広がるばかりだろう」と指摘する。自民党は党内を若返らせることが日本を牽引するうえで欠かせないという自覚を持つべきである。

「『土俵際』の危機感を持て」と産経社説は呼びかけ

産経新聞(8月27日付)の社説(主張)は「新型コロナウイルス禍や激化する米中対立など難局の下で行われる自民党総裁選である」と書き出し、「候補者が政見や国家観を明確に示し、競い合うものにしなければならない」と訴える。

独自の視点でのおもしろさはあるが、同じ保守の党内での総裁選だ。政策を実施するうえでの考え方となる政見はともかく、国家観まではそう大きくは対立しないだろう。産経社説は少々、大上段に構え過ぎていないか。

産経社説は「それを十分にできなければ、国民から期待を寄せられるリーダーを選ぶことにはつながらず、間近に迫る政権選択選挙の衆院選で厳しい審判を下されるかもしれないという危機感を自民党は持つべきである」とも主張するが、これは理解できる。見出しも「『土俵際』の危機感を持て」である。

派閥領袖の大半が菅首相支持でまとまりつつあり、菅首相はその上にあぐらをかいて首相続投を信じているところがある。自民党の伝統ともいえる、派閥中心の多数派工作の悪弊である。しかし、すぐに衆院総選挙が始まり、国民の審判が下る。

産経社説が指摘するように自民党は強い危機感を持って総裁選に臨むことが肝要だ。世論は菅政権に強い不信感を抱いている。自民党は世論を無視するような総裁選を行ってはならない。さもないと衆院総選挙で野党に敗れることになる。