石破氏などが立てば、菅首相はむしろ有利になる
しかし、今回の総裁選は前回とは異なり、全国の党員・党友も投票する。自民党の所属国会議員の383票(1人1票)と、得票数に応じて配分されるドント方式で換算した383票の地方票を取り合う。合計766票の過半数を獲得した者が総裁に選ばれる。
国会議員票は古参の派閥領袖が強い力を持っているのでまとめやすいものの、無記名投票のために完璧には縛ることができない。一般の有権者に近いとされる党員・党友の地方票は、国会議員票よりも流動的だ。おそらく岸田氏に票が集まりやすいだろう。
ただ今後、岸田氏に続いて、高市早苗・前総務相(60)や「出馬せず」から「白紙状態」に変わった石破茂・元幹事長(64)が総裁選に立った場合、菅首相に対する批判票が拡散してしまう。それに投開票日の9月29日までには、さらなる紆余曲折もあるだろう。
ここで理解しておかなければならないのは、自民党総裁選が日本という国の舵を握る首相を決める選挙になる、ということだ。自民党には日本の未来に向け、しっかりとした礎を築ける総裁を選出する責任がある。
「根拠なき楽観、専門知の軽視」と朝日社説は批判
8月27日付の朝日新聞の社説は「菅政権1年の総括から」との見出しを掲げ、「自民党総裁選は岸田文雄前政調会長が立候補を正式に表明したことで、菅首相の無投票再選はなくなった。全国の党員・党友も1票を投じる選挙戦では、新型コロナ対応をはじめ、この1年間の首相の政権運営を総括し、その先の展望を描く、徹底した議論が求められる」と穏やかに書き出すが、そこは菅首相を嫌う社説だけに手厳しい批判を忘れずにこう指摘する。
「政策を決める首相の資質や政治手法自体に疑問符がつけられている。根拠なき楽観、異論に耳を貸さない独善的態度、専門知の軽視、国民の心に届く言葉の欠如……。東京都議選や横浜市長選での自民党の敗北は、そんな首相に対する有権者の不信の表れに違いない」
「首相の資質」という表現に目が留まる。沙鴎一歩も菅氏は首相という職には向かない政治家なのだと思う。
続けて朝日社説は「再選をめざすなら、首相はこの厳しい評価に正面から向き合わねばならない。自らを省み、改めるべき点は率直に認めることが不可欠だ」と主張するが、その通りである。