お膝元で敗北しても「菅続投」を決めたようだ
菅首相は終わった。
8月22日に投開票が行われた横浜市長選で、菅首相が強く推した小此木八郎元国家公安委員長が敗れたと報じられた時、多くの有権者はそう思ったはずである。
ところが新聞各紙の政局予測を読むと、そうはならない可能性もあるというのだ。それは、安倍晋三前首相や二階俊博幹事長、ポスト安倍を争った“政敵”石破茂までが「菅続投」を容認したようだというのである。
立憲民主党を含めた野党なら、菅の首をすげ替えないほうが衆院選を戦いやすいと思うはずだが、なぜ、自民党は負け戦確実の菅を引き摺り下ろさないのだろう。不思議でならない。
菅首相が万が一、このまま首相を続けるとすれば、戦後の首相の中で最悪、最低の首相として名を残すことは間違いないと私は思っている。
私は政治記者ではないが、長年編集者として、時には首相本人、側近、友人たちと交友してきて、その人となりや政策を見てきた。
そんな私が選んだ「日本をダメにした8人の首相」を列記して、彼らと比べて菅首相がいかに首相にふさわしくないかを検証してみようと思う。
安保闘争の岸信介は「国史に長く刻まれるべき総理」
60年安保闘争のとき、私は中学生だったが、私の友人のなかにはデモに参加している意識の高い者もいた。新日米安全保障条約を強行採決した岸信介といえば、往時は憎たらしい印象しかないが、彼の晩年、永田町のヒルトンホテル(現在のザ・キャピトルホテル東急)でときどき見かけることがあった。
孤高の老政治家という雰囲気で、その頃から岸再評価の気運が出てきたようだ。評論家の福田和也が著わした『総理の値打ち』(文藝春秋)は歴代総理たちを100点満点で採点して話題になった。
その中で福田は岸に81点という高得点を与えている。80点台というのは「国運を拓き、宰相として国史に長く刻まれるべき総理」(『〈新版〉総理の値打ち』新潮新書)だそうだ。
アイゼンハワー米大統領(当時)と意気投合し、「極東におけるアメリカの同盟国としての日本の役割を認めさせ、著しく不平等かつ不利だった日米安保条約を双務的なものに改めた」というのがいたく気に入ったようだ。