子どものIQ低下の報道は本当か
8月中旬、英ガーディアンが、ブラウン大学の研究結果を引用し、「パンデミック以前に生まれた3カ月~3歳の幼児の平均IQは100前後だった一方、パンデミック期間に生まれた幼児の平均IQは78だった」と報じました。日本でもその記事が翻訳された形で報道されました。これは衝撃的な内容です。
なぜなら、IQは通常、100が中央値で、約7割の人が85~115程度の中にいますし、100に近いほど、その人数は増えていきます。IQを測る方法によっても多少異なってきますが、70程度以下から、知的障害として評価されます。
つまり、「IQ78」という数字だけ見ると、標準的なIQよりもかなり低い、ということになります。そんなことが本当に起こっているのでしょうか?
コロナ禍に生まれた赤ちゃんは認知機能のスコアが低い
結論から言えば、「パンデミック期間に生まれた子どものIQが78と低くなっている」という科学的根拠に基づいた証拠は一切ありません。そもそもブラウン大学のこの研究では、IQは計測していないのです。
一方、認知機能の発達度合いの計測をしています。例えば、言語の発達を見るような項目では「お名前は?」「手は何で洗う?」というような質問をしますし、言葉の発達に関係ない(非言語性の)視覚的な要素を測る問題では、隠されたおもちゃを見つけたり、ブロックやスプーンを種類ごとに分けたりします。
このようなテスト(the early learning composite, verbal development quotient, non-verbal development quotient) のスコアを、2010年からずっと計測し続けていたところ、2010~2019年までは、スコアが98.5~107.3で(中央値が100)、スコアのばらつきも従来想定されていたばらつき程度(標準偏差は