「副作用もなく安全」として紹介されているが…

「いま人工呼吸器を装着している患者は30代。やや肥満ですが、それ以外に基礎疾患はありません。コロナ第5波になってからは、40、50代の現役世代が重症化するようになりました。しかも患者数が激増してベッドが塞がり、搬送依頼があっても受けられない時もあります」

新型コロナ患者を治療する埼玉医科大学病院の医療従事者
撮影=岩澤倫彦
新型コロナ患者を治療する埼玉医科大学総合医療センターの医療従事者

こう話すのは、新型コロナ治療の最前線で指揮をとる、埼玉医科大学総合医療センターの岡秀昭教授。自身が基礎疾患を抱えながらも、急増するコロナ患者の対応にあたる。

デルタ株に置き換わった新型コロナウイルスが猛威をふるい、病床が圧倒的に足りず、必要な治療が受けられない状態が続く。東京都内では、親子3人の家族全員が新型コロナに感染、40代母親が自宅療養中に死亡する悲劇も起きた。国民全体の半数が一度もコロナのワクチンを接種していないまま、第5波の出口は見つかっていない。

未曾有の混乱と不安の中で、いま注目を集めている薬がイベルメクチン(製品名:ストロメクトール)。

一部の医師やメディアが「重症化を防ぐコロナの特効薬」「副作用もなく安全」として紹介、SNSでは「イベルメクチンがあれば、ワクチン不要」という情報まで飛び交う。18日、衆議院の内閣委員会閉会中審査で、厚生労働省の山本史官房審議官は、イベルメクチンの承認申請がされた場合、優先かつ迅速に審査すると述べた。

だが、新型コロナの治療にあたる専門家の大半は「イベルメクチン」に対して懐疑的だ。その理由を探ると、一般の人が知らない5つの“誤解”がみえてきた――。