イベルメクチンを個人輸入する3つのリスク

最新の新型コロナ診療ガイドラインでは、イベルメクチンは推奨されていない。そこで、イベルメクチンのジェネリックを個人輸入する動きが広がっている。一般的なネット通販とほぼ同じ手順なので、誰でも合法的に購入できるのだが、3つのリスクが潜んでいる。

1番目のリスクは「偽造品の可能性」。イベルメクチンは南半球の国々でも、コロナ治療薬としての期待が高まっているため、メキシコで偽造品が確認されたという報道がある。

2番目は「重篤な副作用が起きてもすべて自己責任」という点。医薬品副作用救済制度(PMDA)は、個人輸入のケースに適用されない。

3番目は「医師が介在せず、自己流の服用になること」。ツイッターなどではアメリカの医師グループによるイベルメクチンの服用例が紹介されているが、これについて小野准教授は警鐘を鳴らす。

「政府の関連機関や学会との関係が明確ではない医師グループが、勝手に提唱する用法用量を鵜呑みにするのは、とても危険な行為です。医師が関与していないと、イベルメクチンが本当に効いたのか、副作用が現に出ていないか、本人も周囲も冷静に確認することができません。飲みっぱなし、副作用が出たら出っ放しになります」(小野准教授)

軽症患者向けに期待できる治療法がほかにある

イベルメクチンが注目されているのは、自宅療養を余儀なくされ、治療を受けられない人が急増していることに関係している。コロナの中等症から重症の治療法は確立されているが、これまで軽症患者の治療だけが空白になっていた。

それが先月、抗体カクテル療法(製品名:ロナプリーブ)が、世界に先駆けて承認されて大きく変わろうとしている。埼玉医科大の岡教授も、この治療に期待を寄せていた。

抗体カクテル療法で使われる『ロナプリーブ』
撮影=岩澤倫彦
抗体カクテル療法で使われる『ロナプリーブ』

「抗体カクテル療法は、重症化や死亡リスクなどを7割低減することが臨床試験で証明されました。発症から7日以内に、肥満や高血圧などの基礎疾患がある軽症患者に点滴で投与します。有効性が判然としないイベルメクチンではなく、抗体カクテル療法を早急に投与する体制づくりとワクチンの接種が、命を救うことに繋がるでしょう」(岡教授)

※「ロナプリーブ」は、新型コロナウイルスがオミクロン株に変異してから投与は推奨されていません。治療法については、必ず厚生労働省の最新情報を確認してください。(2023年6月追記)

岡教授によると、海外では点滴ではなく、皮下注射でも有効性が確認されているという。皮下注射が許可されると、開業医が自宅療養の患者に投与することも可能になるはずだが、東京都医師会の尾崎会長は、根本的な課題があると指摘する。

「抗体カクテル療法にはアナフィラキシーショックなどのリスクはありますが、皮下注射が承認されたら、開業医が訪問診療で対応することが可能かもしれません。ただし、実際は薬が足りず、必要なところに届いていないのです。菅首相は、品川のホテル(宿泊療養施設)にメディアを集めて、抗体カクテルの薬は十分に確保しているとアピールしていましたが、それは期待感だけを持たせて国民を騙す行為です」

政府や東京都の姿勢に疑問を呈した、尾崎会長。すでに第5波の対策として野戦病院の設置に向け、人的配置まで検討していることを明かした。

イベルメクチンは、現時点で「コロナの特効薬」と言えるほどの科学的根拠はなく、イメージだけが独り歩きしている。この非常事態に必要なのは、抗体カクテル療法の薬と野戦病院など治療体制の確保、そしてワクチン接種など感染拡大を抑止する抜本的な対策ではないだろうか。

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