文系と理系、高所得者はどちらか
私たちは、文系、理系というわけ方を日常的にしています。大学受験のときの試験科目の選択や受験科目に端を発しているのでしょうが、高校時代などはるか昔になった世代ですら、自分は文系、理系という括りで会話をすることがよくあります。この文系か理系か問題は、高校時代などはるか昔である今の私たちにどのように影響しているのでしょうか? 実は、数学に対するコンプレックスが知らぬ間に私たちの判断を誤らせている可能性もあるのです。
国際的に見ても、たとえば欧米における性別職域分離の研究では、学部選択のジェンダー差と職業との関連についていくつもの研究があります。そこでは、ジェンダーと、職業・地位達成について、出身学部が影響することが示されています。では、とくに日本国内で、文系出身、理系出身で異なるものがあるのでしょうか。
医療系の職業を除くと生涯所得に差は見られない
2009年に発表された研究では、文系出身者のほうが有利な社会経済的地位につきやすいと示されています。文系出身者と理系出身者を比較すると、所得や上場企業の役員率の割合が文系出身者の方が多かったというのです。また、国立大学の卒業生へのアンケート調査から、工学部出身者よりも社会科学系学部出身者のほうが高所得であることを示す論文もあります。これは、文系と言われる学部出身者がより多く就職する、金融や保険といった職種が高所得であることと、それらの職種において年齢や勤続年数の効果が大きいためとされています。
一方で、インターネットによるアンケート調査などから、理系出身者のほうが平均所得が高く、所得の伸び率も高いことを示す研究も存在します。
今現在の結論としては、理系出身者の方が平均所得が高く伸び率が高いというデータの中で、医療系の職業を除くと、文系、理系での生涯所得に差が見られていないことが示されています。