新時代の国家戦略を3つの「C」で考える

ハネムーン期間中の鳩山新政権としては、これからどんな国づくりをしたいのか、まずは新しい国家像と国家戦略を提示するのが先決となる。たとえマニフェストに謳ったものでも、新政権の戦略フレームワークから外れる政策なら落としていい。

私がマッキンゼー時代、クライアント企業の経営戦略を立てるとき、理論的支柱とした基本的なフレームワークの一つに「3C分析」がある。Comp any(自社)、Customer(顧客やマーケットの状況)、Competitor(競合相手)の3つの視点で個別に、あるいは相互の関係性から総合的に分析して、自らの立ち位置を評価し、直面している課題や今後の可能性を見出していく。

国家戦略のフレームワークも、基本的には同じである。CompanyがCountry(自国)になり、CustomerはConsumer(消費者、生活者)やCitizen(国民、市民)などに置き換えられる。Competitorはアメリカや中国をはじめとする競争相手国。為政者はこの3つの「C」の相対的な関係を踏まえて国家戦略を構築しなければならない。

非自民連合の細川政権や自社さ連立の村山政権なども一時期はあったが、戦後60年間続いた自民党政権は、基本的に「産業政策優先」だった。国民に貯蓄を奨励し、集めた国民の資産を低利で傾斜配分して産業を育成しながら、一方、せっせと貯蓄した国民にはほとんど還元されずにきた。要するに、私の言葉で言えば、日本は提供者の論理で統治され、「生活者主権」の国づくりが行われてこなかったのだ。

民主党はCustomer、Consumer、Citizenに焦点を当て、生活者中心の国づくりをアピールしている。しかし、聞こえてくる政策はバラマキばかりで、具体的な産業政策もなければ、世界に対して日本はどういう立ち位置にあるべきかという思想も見えない。

生活者中心の国づくりといっても、日本国内だけで完結できる課題ではない。日本のような貿易立国は、国際競争力を失ったら将棋でいう詰みの状態になるわけで、世界との相対的な位置関係を常に認識しておかなければならない。そういう視点が民主党には欠落しているのだ。

この10年で世界は激烈に変わった。かつて“スリーピン・ピッグ(眠れる豚)”と揶揄された中国は、世界経済を牽引する巨龍となり、貧困を分配するのみだったインドでも、富の創出と分配の巨大な歯車が回り始めた。今やアメリカからの投資は中国を抜いてインドがナンバーワンだし、米企業でのインド人の活躍は目覚ましい。

ブラジルもバンバン留学生をアメリカに送り込んでいて、ルラ大統領はオバマ米大統領と刎頚の友の間柄だ。

ロシアも国同士ではいろいろな諍いはあるが、若い世代の欧米化は進んでいて、ビジネスの世界ではもはやまったく違和感、遜色がない。ドイツ政府の後押しで自動車会社オペルがカナダの自動車部品大手マグナを中心とする企業連合に売却されることになったが、この企業連合にはロシアの大手銀行スベルバンクが資本参加し、ロシアの自動車会社のギャズが業務提携している。つまり、実質ロシアが買収したようなもので、今やロシアとドイツは蜜月関係にある。