文大統領は日本に来て何をするつもりだった?
7月19日、韓国大統領府は、東京五輪開会式に合わせた文在寅(ムン・ジェイン)大統領の訪日を見送ると発表した。その理由は、訪問しても“成果の実現”が困難になったからだと報じられている。今回は、文大統領が目指した訪日の意味は何か、経済の側面から考察したい。
文氏が目指した成果はいくつか考えられる。まず、韓国の経済界が対日関係の修復を重視していることは大きいだろう。それに加えて、文氏が重視する北朝鮮との宥和・統一に向けて資金面での協力を取り付けることが東京五輪に合わせた来日の遠因との見方もある。そのほかにも想定外の展開に備えてドル資金の確保を目指すなどさまざまなことが思い当たる。
今後、わが国は1965年の日韓請求権協定など国家間の最終的かつ不可逆的な合意に基づき、毅然と、是々非々の姿勢で韓国に対応すればよい。そのために政府は、わが国の企業がより積極的にモノづくりの力を磨き、米中などから必要とされる状況を目指すべきだ。
強硬だった対日姿勢に「変化」が
政権発足来、文大統領は安全保障面を米国に依存し、その一方で経済面では中国との関係を重視した。また、外交政策面では北朝鮮との宥和・統一を目指し、わが国には厳しい姿勢をとった。
ただし、徐々にではあるが、文大統領の対日姿勢は幾分か変化しているように見える。1月に元徴用工などへの損害賠償問題に関して文氏が「資産が現金化されることは、日韓双方にとって好ましくない」と述べたことはそう考える要因の一つだ。その上で韓国政府はわが国に首脳会談の実施を求めたと報じられている。
その背景には、韓国経済の構造的な特徴が影響しているだろう。結論を先に述べれば、韓国の経済が安定して推移するために、わが国との通商、および金融面での関係は抜きにできない。それは一朝一夕に変わらない。
まず、通商面に関して、韓国経済の牽引役に位置付けられる半導体産業は、わが国企業との取引を強化しようとしてきた。2019年7月にわが国の経済産業省がフッ化水素、フッ化ポリイミド、レジストの3品目の対韓輸出管理を厳格化すると表明した後、サムスン電子などの韓国企業トップは訪日して半導体部材の在庫確保などに動いた。