韓国の半導体産業のために対日関係を修復したい
その後、高純度の半導体部材の対韓輸出は減少傾向となってはいない。また、今年6月に韓国の経済団体である“全国経済人連合会”(わが国の経団連に相当する組織)は、相星孝一駐韓大使を招いた懇談会を開催し、わが国に民間レベルでの交流を促進するよう要請を行った。
今後、韓国経済にとっての対日通商関係の重要性はさらに増すだろう。サムスン電子とSKハイニックスはファウンドリー事業の強化に取り組んでいる。微細化を推進し世界のファウンドリー市場のシェアを獲得している台湾積体電路製造(TSMC)は、後工程での製造技術の強化に向けてわが国企業や研究機関との連携を進めている。
その状況下、韓国の半導体産業の成長のために対日関係を修復して、より円滑な貿易や直接投資の実施を目指すことは重要だ。そのために、文氏はわが国との首脳会談を目指したとみられる。
ドル資金の流出リスクは軽視できない
次に韓国経済全体での資金繰りを考えた場合にも、文政権にとってわが国との関係強化を目指すことは重要だ。特に、デルタ株など新型コロナウイルスの感染再拡大が世界経済に与える影響は過小評価すべきでない。
現時点で韓国の経済は相応の回復力を維持しており、早晩、資金が海外に流出するリスクは低く抑えられている。しかし、中長期的な展開を考えた場合、潜在的なドル資金の流出リスクは軽視できない。過去、世界経済の先行き不透明感が高まり始めると、韓国の企業や金融機関がドル資金を調達するコストが上昇し、韓国経済と金融市場の不安定感が高まってきたからだ。
それは、2020年3月上旬から中旬にかけての韓国経済と金融市場の混乱を振り返るとよく分かる。当時、世界全体に新型コロナウイルスの感染が拡大した。その結果、想定以上に感染の拡大が世界経済を減速あるいは後退させるとの懸念が高まり、多くの投資家がリスクの削減を急ぎ、新興国通貨売り・ドル買いのオペレーションが急増した。