マレーシア、インドネシアよりも値下がりしている
7月に入りアジアの通貨市場が不安定に推移している。月初から13日までの主な通貨の対ドル為替レートの騰落率を見ると、韓国ウォンは1.7%程度下落した。デルタ株感染が深刻なマレーシア・リンギットやインドネシア・ルピアと比べウォンの下落幅は大きい。
ウォン安の背景には、韓国での新規感染者の増加の影響がある。それに加えて、足許の景気を支える韓国主要企業での経営者と労働組合の対立も海外投資家にとってウォン売り材料だろう。先行きを考えると、米国の物価上昇が韓国経済に与える影響も不安材料だ。
2020年後半以降、韓国経済は半導体や造船業などの業績改善に支えられて回復し、世界経済の中でも好調さを維持している。今すぐその状況が変化するとは考えられない。ただし、いずれ景気の回復ペースは鈍化するだろう。
そのタイミングで米国でのインフレ圧力が高まるなどして韓国の金利上昇が鮮明となれば、家計などの債務問題は深刻化するだろう。感染リスク、労使対立、債務問題などの不確定要素がある中、ウォンを売り韓国経済の先行きを慎重に見極めようとする投資家は増えつつある。
デルタ株の猛威が景気回復の足枷に
6月下旬以降、韓国ではデルタ株をはじめとする新型コロナウイルスへの感染が急増した。7月に入ると一日当たりの新規感染者数が1000人を超えた。韓国メディアの報道によると、今回の感染拡大ペースは当局の予想を上回っている。
英国などのワクチン接種と感染者の推移を確認すると、ワクチン接種者の増加によって、新規の感染が増えたとしても亡くなる人の数は抑えられている。しかし、わが国と同様に韓国ではワクチン接種が遅れている。ワクチンの接種が遅れる中で感染者が増加すると、医療の逼迫を防ぐために人の外出を制限しなければならない。動線が絞られると、消費は減少し、景気の停滞懸念が高まる。それが7月に入ってからのウォン安の一因だ。
足許、韓国経済は半導体などの輸出に支えられて堅調に推移している。その一方で、感染者の増加によって、百貨店などを運営するロッテショッピングの株価は下落した。それは、感染の拡大が内需を落ち込ませるという主要投資家の不安を反映している。