韓国経済を不安定化させる“K字型”
韓国経済全体で考えた場合、半導体や造船など製造業の業況が勢い良く伸びる一方で、小売り、宿泊、飲食などサービス業をはじめとする非製造業には下押し圧力がかかるとの懸念が高まっている。経済のK字型展開が勢いづくと、基本的に経済の不安定感は高まる。
その状況下、主要投資家はリスクテイクに慎重になる。それに加えて、世界経済のデジタル化の加速などによってアフターコロナが実現した場合の経済の状況が、パンデミック発生前とかなり異なっている可能性もある。
このように、デルタ株の感染は韓国経済の先行きに関する不確定要素を増大させ、ウォン売り圧力を高めた。見方を変えれば、リスク回避のドル買いだ。感染が増え始めたタイミングで韓国総合株価指数(KOSPI)は最高値を更新し、利益確定のための韓国株売り・ウォン売りのオペレーションを行う海外投資家も増えた。
現代重工業のストライキが暗い影を落とす
それに加えて、財閥系の大手造船メーカーで経営者と労働組合の対立が先鋭化したこともウォン売りの一因となっただろう。7月6日、造船や海洋プラント大手の現代重工業で全面的なストライキが実施された。それは、2019年から2020年の賃金交渉が解決していないための対応だという。造船業は、韓国経済を支えるK字の上向きの線を構成する産業だ。それだけにウォン安への影響は慎重に考えるべきだ。
ストライキは労使双方にとって痛手だ。2019年に現代重工業は大宇造船海洋を買収すると発表し、現在は各国の独禁法当局の審査が行われている。買収の発表後、現代重工業は経営統合を念頭に構造改革を進めて事業運営の効率性向上に取り組んだ。その状況下、徐々に脱炭素を目指したLNG需要が高まり、同社はLNG運搬船の受注を獲得した。
さらにコロナ禍が発生したことによって、世界全体でコンテナ船の不足などに拍車がかかり、現代重工業は“造船特需”というべき事業環境を迎えている。現代重工業にとって、労働者と経営陣が協力してよりよい造船技術の発揮を目指すことが合理的だ。