旅行添乗員はさまざまな職業の「ウラの顔」をみている。現役添乗員の梅村達さんは「『宴会係が忌み嫌う3つの職業』というのがある。いずれも安定していて、生活に不安を覚える必要などない、金銭的には恵まれた人たちだが、宴会係は『嵐の宴会』を覚悟することになる」という――。(第1回/全2回)

※本稿は、梅村達『派遣添乗員ヘトヘト日記』(三五館シンシャ)の一部を再編集したものです。

ビールで乾杯
写真=iStock.com/taa22
※写真はイメージです

旅行添乗員を悩ませる「荒れる宴会」

もう今では、社員旅行はめっきり少なくなってしまった。しかし、建設業界は男の世界ということもあって、いまだに社員旅行を行なう会社が多い。そしてコテコテ系の宴会もいっこうに昔と変わらない。

私が遭遇した建設会社の社員旅行では、宴会につきものの余興がすごかった。社員がマイケル・ジャクソンや美空ひばりに扮したのだが、衣裳ばかりか物真似まで芸人並みなのだ。私も仕事をしながら思わず見入ってしまうほどであった。

あるゼネコンの社員旅行のこと。宴会の打ち合わせに、私ともうひとりの添乗員・竹中、そして旅館の宴会係・飯山が顔を揃えた。添乗員・竹中は50代半ばと思われる女性で、宴会係・飯山も50代後半の男性であった。

打ち合わせをしているうちに、話はいつしか変な方向にそれていった。2人は今の仕事が、イヤでイヤでたまらないという。竹中は、添乗する前日には内臓が重くなり、次の日が来るのが嫌になるときがあると言う。

まだ独り身らしい竹中は、ある程度金が貯まるまではしばらくこの仕事を続けるつもりだという。飯山もそれに呼応するかのように、旅館の宴会係がいかにストレスが多く、つまらない仕事かを言いつのる。特に建築業関係の社員旅行は宴会が荒れるから困ると言った。