ワンルームより1LDKのニーズが上昇
在宅ワークが増え、オフィスの解約が相次いでいる。オフィスコストの削減の分、在宅ワーク手当が出ればと期待するし、その資金で家での仕事環境を良くしたい人も多いだろう。もう1部屋欲しい人の住み替えは増えてきており、ワンルームより1LDKのニーズが高くなるなどの需要の変化が見られる。コロナ禍での会社側の制度変更が進む中、自宅の購入も含めて視野を広げて検討すると正解が見つけられるはずだ。
アベノミクスが始まるまでは、日本はデフレ懸念があった。日本の経済成長率が落ちる中、人件費の重たさに苦しむ老舗企業が多かった。そんな際には、給与水準や手当や退職金を低く抑えることを主眼とした制度変更が行われていた。但し、従業員に対する就業規則の不利益変更は一定のハードルがあり、困難を極めた。
企業による住宅手当が手厚くなっている
しかし、アベノミクス効果で有効求人倍率が2を上回るような「超人手不足」となると、事態は一変する。人材確保のために、手厚い福利厚生が行われるようになる。手当の拡充などによる実質的な人件費の増加である。実際、厚生労働省の「令和2年就労条件総合調査」では、住宅手当の支給企業は、5年前の45.8%から47.2%に増えており、住宅手当の平均支給額も800円増えて、1万7800円となっている。
東京都産業労働局の「中小企業の賃金・退職金事情」には賃貸と持家での住宅手当の金額も判明している。扶養家族ありで賃貸が2万4030円なのに対し、持家は1万6628円と低く、扶養家族なしでも賃貸1万9966円に対し、持家1万3148円と賃貸の方が手厚い補助がされている。また、調査サンプルの最高額は扶養家族ありで賃貸が8万円に対し、持家は3.5万円に留まっている。
このように、賃貸に手厚い補助をすると、持家購入を遠ざけることになりがちだ。私が知っている事例では、12万円の家賃補助が出ている大企業があった。ここまで手厚い補助が出ると、自宅を購入する意思が薄れる。この補助を受けていた人は50代になり持家購入を検討し始めたが、定年までの期間が短く、住宅ローンも長期で引くことができず、老後の家の確保に難航した。