4月1日から改正高年齢者雇用安定法が施行される。努力義務ではあるが、70歳までの雇用が促進された場合、若い世代への影響は大きい。人事ジャーナリストの溝上憲文さんは「数年後にバブル入社世代が定年にさしかかる。彼らを70歳まで雇用し続けるのは厳しいと考える人事部は多い。新規採用や昇進・昇給の抑制、定期昇給の廃止など、現状の制度の抜本的な見直しが必要」と指摘する――。
2025年度以降は70歳までの雇用義務化へ
70歳まで雇用する改正高年齢者雇用安定法(高齢法)の施行が4月1日と目前に迫っている。今回は努力義務であるが、政府の工程表では2025年度以降の義務化も視野に入っている。
加速する少子高齢化による生産年齢人口の減少や年金・医療などの社会保障をカバーするのが最大の目的だが、個人にとっては老後の生活資金を得るために働かざるを得ないという事情もある。
現行の高齢法は①65歳までの定年引き上げ、②定年制の廃止、③65歳までの継続雇用制度(再雇用制度等)――の3つの選択肢のいずれかを実施することを義務づけている。最も多いのは希望者全員を再雇用する継続雇用制度で導入企業は全体の76.4%を占めている。従業員301人以上の企業では86.9%と圧倒的に多い(厚生労働省「高年齢者の雇用状況(2020年6月現在)」)。再雇用制度は60歳で定年退職後に1年の有期雇用契約を結び、65歳まで更新する。給与は60歳以前より3~4割下がるのが一般的だ。
フリーランスとして働くことも可能に
今回の改正高齢法は、65歳から70歳までの就業を確保する措置として上記3つの選択肢を70歳まで引き上げることに加えて、新たに2つの選択肢を用意している。
①70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度
②70歳まで継続的に社会貢献事業に従事できる制度(事業主が自ら実施する社会貢献事業と事業主が委託、出資等=資金提供する団体が行う社会貢献事業の2つ)
②70歳まで継続的に社会貢献事業に従事できる制度(事業主が自ら実施する社会貢献事業と事業主が委託、出資等=資金提供する団体が行う社会貢献事業の2つ)
今の会社と業務委託契約を結んでフリーランスとして働くことも可能になる。社会貢献事業は上記2種類があり、自社で実施する社会貢献事業は、会社の事業以外のSDGsなどの活動も入り、会社の歴史や商品の歴史を説明するセミナーや講演会の講師、植林事業など自然再生の環境プロジェクトのボランティア活動のリーダー役などが想定されている。もう一つの会社が委託・出資する団体とは、財団法人やNPO法人など、すでに企業と一定の関係を持っている団体で働くことが想定されている。