ジャンプは「最初の1回転」が難しい

イーオン社長の三宅義和氏
撮影=原貴彦
イーオン社長の三宅義和氏

【三宅】普段、練習はどれくらいされるのですか?

【宮原】私の場合、氷上の練習は1日3~4時間で、日によってさらにトレーニングを2時間くらいやっています。力強さとしなやかさのバランスが大切なので、筋力トレーニングだけでなく、ダンスやバレエのトレーニングもしています。

【三宅】そうですか。ちなみにジャンプの回転数を1つ増やすというのは、かなりの大ごとなのですか?

【宮原】そう思われがちですが、実はどのジャンプも空中では同じ姿勢で、踏み切りだけが違います。最初のハードルは1回転ジャンプで、それが飛べるようになって感覚がわかってくれば、シングルからダブル、ダブルからトリプルと、立て続けに飛べるようになったりするものです。少なくとも私はそうでした。

【三宅】ちなみに宮原さんのようなトップ選手になると、練習中のトリプルジャンプの成功率はどれくらいなのですか?

【宮原】アクセル以外のトリプルジャンプであれば、ほぼ100%です。

【三宅】失礼しました。てっきり一か八かの世界だと思っていました(笑)。

【宮原】逆にひたすら練習して「絶対に飛べる」という自信があるものを試合のプログラムに入れます。ただ、前日の疲労をひきずっていたりすると、1本1本のジャンプは単発で飛べても、曲を通して体がしんどくなったときに飛べなくなるということはあります。ですから、やはり試合前のコンディションづくりが大事になってきますね。

「いつもやっているように滑ればいい」と思うほうがうまくいく

【三宅】いろいろ大舞台を経験されると、本番の緊張は和らぐものですか?

【宮原】いつまでも慣れないです。やはりジャンプが一番緊張しますね。最初から最後まで緊張が解けることはないです。とくに大きな大会になればなるほど緊張します。

これはもうスケートをしているかぎり一生つきあわなければいけない課題だと思っています。

【三宅】「緊張を味方につける」と言葉で言うのは簡単で、実際はなかなか難しいですよね。メンタル面の対応について、なにか特別なことをやっていらっしゃるんですか?

【宮原】メンタルの強化という意味では、厳しい練習をめげずにやりつづけてきたことで、多少は鍛えられているかなと思います。ただ、メンタルトレーナーをつけるといったことはしていません。

【三宅】たとえば、本番前に「私の演技で観客のみんなを感動させるんだ! これだけ練習してきたんだから大丈夫だ!」みたいに自分を奮い立たせるようなことはなさるのでしょうか?

【宮原】やってみたことはあるんですけど、私の場合は変に力んでしまって、ジャンプに狂いが出ることが多かったんですね。それよりも「いつもやっているように滑ればいいや」と開き直ってみたほうが落ち着いてできる気がしています。