最初が成功しても、緊張感は保ったまま

【三宅】ちなみに最初のジャンプで失敗すると、緊張の糸が切れてしまったりするものですか?

【宮原】失敗の仕方にもよります。とくに緊張しすぎて良くない失敗をしてしまったときは、うまく気持ちの切り替えができなくて、次のジャンプに行くのが少し怖くなることはあります。

【三宅】逆に最初が成功すると「今日は行けそうだぞ!」と思うわけですか?

【宮原】いえ、そこで気持ちが乗るというよりは、「どうにかこのままいってほしい」という感じで、緊張感は保ったままです。

大ケガをしても「絶対リンクに戻れる」自信はあった

【三宅】宮原さんは2017年1月に左股関節を疲労骨折されました。平昌オリンピックのちょうど1年くらい前ですね。全日本選手権3連覇中で、いよいよ勝負の年という段階でのケガということで、ショックは大きかったですか?

【宮原】実はあまりショックはなくて、その前から痛みはあったので、なんとなく覚悟はしていました。

【三宅】その年の春に国立スポーツ科学センターで、1カ月泊まり込みでリハビリをされています。このときはどのような心境だったのでしょうか?

【宮原】悲壮感はなかったですね。ケガするまでは「どんな状態でも練習は詰めてやらないといけないんだ」という考えがありましたが、私と同じようにリハビリに励んでいる他のスポーツの選手といろいろなお話をするうちに、「まずケガを治すことに専念しよう。徐々に氷に乗れば、きっと大丈夫」という自信みたいなものを得ることができました。

【三宅】その自信はどこから出てきたんですか? 当時のコーチは「(2018年の平昌はあきらめて)2022年の北京に標準を合わせよう」とおっしゃっていたくらいですよね。

【宮原】根拠はないんです(笑)。ただ「絶対リンクに戻れる」という自信はずっとありましたし、むしろリハビリ期間があったから、スケートに対してより前向きになる気持ちを得られた気がします。リハビリ自体も楽しんでやっていましたから。

【三宅】自信があったのも素晴らしいですけど、そこで「楽しめた」といえるのもすごいですね。

【宮原】それまでの選手生活で体験したことがないことを毎日するという、新鮮な感覚があったからかもしれません。「こんなこと、いままでなかったな」とずっと思っていました。