※本稿は、桑野麻衣『オンラインでも好かれる人・信頼される人の話し方』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。
自分の顔を見る機会が増えている
オンラインコミュニケーションが増えたことで、「自分の顔を画面いっぱいに見るのが辛い」と嘆く声をよく聞くようになりました。
確かになかなかこれほど長時間にわたり、自分の顔を改めてアップで見る機会はありませんよね。特に女性はまだ毎日メイクやスキンケアをする時に鏡を見る習慣がありますが、男性はより抵抗を感じるかもしれません。
しかし、私はこれを一つのコミュニケーション力を向上させるチャンスだと前向きに捉えています。
人は誰もが感情を持ち、目の前の相手に対して感謝や申し訳ないという「ココロ」があります。しかし、私たち日本人の中にはそれを「カタチ」として表現することが苦手な人が多いのです。多くの場合、表情や話し方、言葉遣いといった「カタチ」が表現されていなければ、そもそも「ココロ」がないとみなされてしまいます。
さらに、対面でのコミュニケーションでは五感を使って「ココロ」を表現できますが、オンライン上では基本的に視覚と聴覚の二感(以下)に限られた表現になります。そのため、対面であれば相手にスムーズに伝わるものも、オンラインになるとどうしても伝わりにくくなってしまいます。より「ココロ」を「カタチ」にする表現力が必要になってきます。
そんなオンラインコミュニケーションだからこそ、これまであまり気にしてこなかった、とあるものに真正面から向き合い、磨いていくチャンスです。
私たちが画面越しに見ている自分の顔で、最も長く目に入るのはどのような時の顔でしょうか?
人が話し出した途端に真顔になっていないか
もちろん相手の顔やカメラを見ている時間もありますが、「人の話を聞く時の自分の表情」を見るようになりました。これは無意識であることがほとんどなので「真顔」とも言えます。これまで対面でのコミュニケーションではなかなか見る機会のなかった表情です。
しかし、実は起きている時間の中で最も長く人様に見せている顔がこの「真顔」なのです。どんなに話している時に生き生きした表情をしていても、人が話す番になった瞬間に無表情になってしまえば、その印象が相手には残ります。
私たちは1人きりでも、2人きりでも生きていません。複数の人たちとコミュニケーションを取ることが多くあります。例えば4人で打ち合わせをしたり、ご飯を食べに行った時を想像してください。話しすぎる人は例外として、単純に計算すれば自分が話す時間は4分の1になります。残りの4分の3、言い換えれば3倍の時間は人の話を聞く時間なのです。人の話を聞く表情が大事と言われる理由はご理解いただけたでしょうか。