Amazon書籍ランキング3日連続1位の話題書『世界は救えないけど豚の角煮は作れる』。著者は女性YouTuberのにゃんたこ。雑な日常ムービーに、哲学的な字幕を載せた動画が多くのファンを惹きつけている。その魅力の一端を抜粋して紹介しよう――。

※本稿は、にゃんたこ『世界は救えないけど豚の角煮は作れる』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

ほんの一面としてのショートパンツ

ショートパンツが好きである。

三十歳も近づく今、私は年がら年中ショートパンツを履いている。

周りはよく「いい歳して一体いつまでショートパンツを履くのか?」と私に聞く。全く大きなお世話である。

アメリカズ・ゴット・タレントという海外の番組での、スーザン・ボイルという女性の返答に私はとても深い感銘を受けた。

「君の名前は?」「スーザン・ボイルよ」「年齡は?」「四十七」「(会場に怪訝な空気のどよめきとひやかすような笑いが起きる)」「あら、年齡なんて、私のほんの一面に過ぎないわ!」

年齡なんて・私のほんの一面に過ぎない。

年齡なんて・人間の・ほんの・たったの・一面にすぎない。

年をとるのが怖かった。そんな私を彼女の一言が救ってくれた。

カラオケ
YouTubeチャンネル「にゃんたこ」の『アラサー萌え声ダンバイン』より

本当に、年齡なんて、私のほんの一面に過ぎないのだ。容姿、学歴、家柄、趣味、住んでいる場所、持っている資格、奥歯にかぶせられた銀歯、変な方向に曲がっている左の親指、胸の下のほくろ、私を構成するすべてのものも同様に。

私はショートパンツを履き続ける。ほんの一面をその人の全てと思い込んでしまう、悲しい価値観に抗い続けるために。