命に関わる出来事が立て続けに起こり、「この人とはもう無理」と確信

――三面記事になりそうな、虐待につながりかねない話ですね。経済的には、どうだったんですか?

ずっと、きつかった。息子が保育園の年長さんになるくらいのときか。どうにも生活が回らないようになってしもうた。それこそ一番ひどいときは、米以外の食費を月1万円で回さなあかんぐらいお金がなくて。なんとか食べていくのがやっとこさで、自分の病院も行かれへんかった。

*池脇さんへの心理的な圧迫、長男への間違った“しつけ”、そして困窮。それでも彼女はやりくりのため通院を我慢。その結果、バセドー病が悪化してしまった。

池脇さんは次第に離婚を考え始めるようになる。命に関わるような出来事が立て続けに起こり、「この人、違うかも」という思いが、「この人とは、もう無理」という確信に変わっていったのだ。

――警察や救急のお世話になったりしなかったんですか?

夜中に息子が自分で勝手に冷蔵庫を開け、約100錠もの薬を飲んでしもうた。息子用のアレルギーやアトピーの薬。夜中、うちがウトウトしてたら息子に起こされて。そしたら息子、「お母さんゲポしてん、○くんゲポしてん」って言うんや。うちはそれで慌てて、「大変や! 病院連れていかな」って思って、必死にBを叩き起こしたんです。でもBは眠そうな顔で「水飲ましとけ」って、ひと言言うだけ。「この子がどないかなったら、どないすんの⁉」ってうちが抗議したら、「それぐらいで死なへんやろ。ワシ仕事あるんや。寝るで」とか言うんやで。うち、さすがにカチンときてな、「そしたらうちが連れて行くわ」って言うて、うちが一人で夜間救急に連れて行きました。

夫からの「殺害予告」で離婚を決意

――別れようと決意したのは?

電化製品を投げつけられたときやね。

――……どういうことですか?

うち、心の病の影響もあって、全然寝られへんねん。3階の寝室から2階のリビングに下りてきて、Oのライブ映像とか韓流ドラマのDVDを観ながら寝るようになったんや。そのことにBが不満を持ってたみたいで、あるとき階段下りてきて暴れたんやわ。不満が爆発したんやろうな。

――暴れたって、どんなふうにですか?

ちょうど、韓流ドラマのDVDを観ながらウトウトしてるときやった。Bが2階のリビングに下りてきたんや。「こんなビデオずっと観てるから、寝られへんのとちゃうんか⁉」って怒鳴りながら、テレビとDVDプレイヤーのコード引っこ抜いて、バンバンどついたり、蹴ったりした後、部屋の端っこのカウンターキッチンの陰にいた息子に向かって、テレビやらDVDプレイヤーやらを投げつけたんです。隠れてたから、息子には何もけがはなかったけど、これにはさすがにうちもぶち切れて言ったった。「物に当たるんやったら、うち殴れ!」って。するとBは「おまえらに手出すときは、殺すときや!」って言いよったんやで。

*機器が長男に当たっていたら、大けがをしていたかもしれない。しかも、“殺害予告”までされたのだ。この一件で、池脇さんの気持ちは完全に離れてしまった。とはいえ、すぐに離婚することはできなかった。

「出て行くお金はないし、あてもない。実家は実家で父親が怖い人やから、帰ったらうちがしんどい。それで実家にも戻れず、家庭内別居してたんやわ」

彼女がいったいどのくらい家庭内別居していたのか分からない。ただ一つ言えるのはどこに行っても八方塞がりで、行くところがなくじっと暴力を耐えるしかなかったということだ。