「自己投資」を続けるために借金を重ねる人も…
この形態のセミナーは、強烈なストレスによる精神的なダメージが残ってしまうことや、参加者に強引な勧誘を行わせることから、さまざまな団体が過去に何度も社会問題を引き起こしている。
「環境」ではこうした危険なセミナーへの参加を奨励しており、その際のスタッフはほとんどが「環境」の先輩構成員である。本来の自己啓発セミナーは人生の目標を前向きに考え直すものだが、彼らの洗脳セミナーは、これまでの価値観を破壊し、そこに勧誘活動の成功という目標を植え付けるものだ。
毎月15万円の「自己投資」が払えなくなった場合、穴埋めの方法は「ダブルワーク」と「借金」の2つだ。
ダブルワークでは、本業とは別に深夜まで居酒屋で働いていたり、女性の場合は性風俗業で収入を穴埋めしているケースもあった。借金では、筆者が取材したある脱会者は、借金と共にクレジットカードの支払い延滞でブラックリスト入りしてしまい、今もカードを作れないという。
ダブルワークや借金でも穴埋めができなくなった会員は脱落していく。ただ、「環境」の会員には高収入でフリーランスのシステムエンジニアが多い。この場合、長く自己投資を続けられてしまうため、多くの時間と財産を奪われることになる。
実態は起業サークルではなく悪質なカルト
私の取材では、起業を目的に「環境」の会員を続けているのに、起業に至らないまま10年以上も在籍している例が聞かれた。勧誘に成功していれば負担額は減るものの、自己投資を1年間で最大180万円、5年間で900万円、10年間で1800万円を失うことになる。
在籍期間はプライベートの時間をほとんど「環境」の勧誘に使ってしまうため、本来友人と過ごしたり、自己研鑽に励んだりする時間を組織に奪われることになる。
さらに、「環境」では勧誘の時間を捻出させるためにフリーランスや派遣への転職を勧めることが多く、その派遣会社が「環境」関連の会社というケースがある。ここまで来ると、生活の全てを「環境」にささげてしまっていることになる。
人間関係の切断や集団生活、疲労による思考力低下を狙った激しい勧誘への誘導といった手法は、カルト集団が利用してきたマインドコントロールの技術に酷似している。「環境」は、宗教団体や政治団体ほどは警戒されない「起業サークル」を自称するが、その実態はカルトであり、深みにはまり込んでしまった場合に抜け出すのは難しい。被害に遭わないよう、十分に気をつけてもらいたい。