マルチ商法などの悪徳商法は、どのようにして会員を洗脳しているのか。ライターの雨宮純氏は「まずは運営するシェアハウスに強制的に移住させ、勧誘漬けの生活に。会員の自由な時間を奪い、それまでの人間関係を断ち切る。勧誘生活に慣れたところで、自己啓発セミナーに参加させて価値観を植え付ける。実態は悪徳商法というよりもカルトに近い」という――。(第2回)
叫び声をあげる亡霊たち
写真=iStock.com/FOTOKITA
※写真はイメージです

50人以上が暮らす一軒家のシェアハウス

引っ越しの手伝いで訪れたシェアハウス。玄関脇の靴入れには外観からは想像できない量の靴が入れられ、収まりきらない靴が床に散らばっていた。傘入れにもおびただしい量の傘が差し込まれ、昼間にもかかわらず室内は薄暗かった。

これは私が悪徳商法集団「環境」を辞めたという会員に誘われ、引っ越しの手伝いをした際に見た実情だ。

「『環境』を脱退したためにシェアハウスから引っ越します。話は付けておきますので、手伝いに来てみませんか」

Bさんに誘われた私は、都内某所にある彼らの「シェアハウス」に向かった。私がそこで見たものは、「シェアハウス」というイメージとは全く異なる光景だった。

私が最初に驚いたのは、冒頭にも書いた玄関の状態である。物件は一軒家で、インターネット上に掲載されていた間取りと面積から考えられる居住人数は多くても10人程度だった。ところが、Bさんに人数を聞いた私は、返事に耳を疑った。

「今は50人弱ですね。あまりにも多いので正確な人数は把握できていません」

この家に50人もの人間を、どうやって住まわせているのか。引っ越しの手伝いをしながら建物内を見て回った私は、その異様な住環境に恐怖を覚えながら納得することになった。