悪徳なマルチ商法はどのような勧誘をしているのか。ライターの雨宮純氏は「彼らは“事業計画書”と称して勧誘の具体的な目標を立てており、1日5人以上勧誘することもある。勧誘手法は常にアップデートされており、効果的な誘い文句を構成員同士で共有している」という――。(第3回)
落ち込んだビジネスマン
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「事業計画」はただの勧誘目標

「紹介者と一緒に作成した『事業計画』は、想像していたものとは全く違っていました。」

「事業計画」と聞いて一般的に思い浮かぶのはこれから手掛けるビジネスの内容や売り上げ見込み、マーケティング方法といったものだろう。ところが本連載で取り上げてきた悪徳商法集団、「環境」に所属していたCさん(旧帝大出身、システムエンジニア)が作成を指示された「事業計画」は、単なる勧誘目標だった。

彼らはこのような言い換えや承認手法を駆使して会員を勧誘に向かわせ、考え抜かれた勧誘方法で外部者を取り込んでいく。本稿では元会員への取材を通してその実態に迫る。

30人・20人・10人の目標を立てることに

「環境」では勧誘行為を「現場」、勧誘目標を「事業計画」と呼んでいる。夜に3件の勧誘をこなせば「昨夜は3件現場をやった」となる。「環境」に入るとすぐに「事業計画」を紹介者と作るように言われ、勧誘目標を立てさせられるようだ。

典型的な目標は「1カ月に30人の新しい友人を作り、20人と1対1で会い、10人を師匠に紹介する。そして○カ月後に○人を入会させる」というもの。このような言い換えを行うことで、構成員は何か重要なことを行っているかのような感覚になるという。

またCさんは、「環境」では勧誘行為を起業した時の仲間集めであるとセミナーで教え込まれていて、マルチ商法に類似したビジネスの勧誘を行っている意識はなかったという。