ピンハネを目的とした合コンやBBQを開催

「朝昼晩晩晩」にはどこか、旧日本軍の「月月火水木金金」を想起させる響きがある。このような一見奇妙に思える用語群も、集団内でしか通じない言葉を使うことで帰属意識を高め、「特別なことをやっている」と思わせる効果があると考えられる。さらに、合コンや飲み会といった勧誘イベントには他にも目的があった。収益の確保である。

「飲食店のコースを予約しておき、実費よりも多く回収して収入の足しにする行為が『経営の練習』として推奨されていました。実際は3000円のコースを4000円と言って集金すれば、10人で10000円の収益になります。このため『環境』の飲み会でレシート確認を申し出ると嫌がられます。

人によっては必ず毎週飲み会を入れる代わりに飲食店に特別コースを作ってもらい、幹事は2名まで無料にするなどの交渉をしていました。この行動力は凄いと思いましたね。ほかにも、100人規模のバーベキューで10万円以上儲けたこともありましたよ。ただこれでも収入は足りず、結局ダブルワークはしていました」

男性の場合は早朝や夜勤の仕事に関する情報が内部で共有されており、効率のいい職場を紹介してもらうようだ。また、女性の場合は夜の仕事で同様のことが行われており、同じガールズバーやキャバクラに環境構成員が何人も所属していたという。

「普通の友達」になってから勧誘を始めるパターンも

毎月15万円の上納金を幹部に支払っている会員は、生活が苦しくなれば自然に収益も兼ねた勧誘に励むようになる。それを「経営の練習」と呼べばなおさら真面目に取り組むだろう。このように「環境」では、その端々で妙に考え込まれた仕掛けが見られる。勧誘手法がその代表である。

「勧誘手法は細かく教え込まれていました。例えば先に話した『合コンは人生だと思え講座』では、合コンは5対5が推奨されていて、幹事は全体を見渡せるように対角線に座ること、男女は途中からクロスして座らせ会話を弾ませることなどが教えられていました。

こうして場を盛り上げた場合も、たくさん話せた人とあまり話せなかった人が出てくるので、前者には『楽しかったのでもっと話しましょう』、後者なら『あまり話せなかったのでまた会いましょう』と次の勧誘に繋げるんです。

15名ほど集まったフットサルイベントの写真。男女比はほぼ1対1。スポーツが好きな友人に対しては、こういったイベントに連れ出すことで勧誘につなげていたという。こちらも提供者の希望で画像には加工を施してある
写真=筆者提供
15名ほど集まったフットサルイベントの写真。男女比はほぼ1対1。スポーツが好きな友人に対しては、こういったイベントに連れ出すことで勧誘につなげていたという。こちらも提供者の希望で画像には加工を施してある

また、合コンや飲み会では『参加者の友人』、つまり構成員から見た『友人の友人』を呼んでもらうことが重視され、私の場合も学生時代の友人から誘われた合コンで彼らと接触しました。これを『環境』では『内製ないせい』と呼んでいました。

私も彼らと知り合った当初は起業にはまったく興味がなかったので、2年間ほど普通の友達付き合いをしていました。その間に環境の会員は私の地元の友人とまで親しくなっていたようです。その後、転職を考えていると話したある日、師匠を紹介されたんです。このように1年、2年と全く直接的な勧誘をしないこともあります」

知り合って2年間も全く勧誘をしてこない友人。そんな人物が、まさか悪徳商法団体の構成員だとは思わないのではないだろうか。そんなただの友人が、職場への不満や転職を口に出した途端に牙を剥くのである。