すべての部屋に配置された三段ベッド
荷物を運びながら見た部屋には、例外なく三段ベッドが複数押し込まれており、収納しきれないのか床には荷物が散乱していた。また、晴れた日の昼間にもかかわらずカーテンが締め切られ薄暗かった。これは外からその異常な空間を見られ、奇異に思われるのを防ぐためと考えられる。
私は内部の様子を窺いながらもBさんに従って手伝いを進めていたが、一通りの作業が終わったところである違和感に気づいた。
シェアハウスならば通常見られる交流スペースが見当たらないのだ。見た部屋の全てに三段ベッドが押し込まれ、食事をするスペースが見当たらなかった。脱会者によれば、私が見ていない部屋は雑魚寝状態の居室か、収納に利用されているという。
特に収納に関しては、各自の荷物のほか、「環境」で取り扱っている商品のダンボールが積まれているそうだ。毎月15万円もの買い込みを行っているため、1カ月では使い切れない商品がたまっていくのである。
シェアハウスに住んでいた脱会者のAさんから、使いきれずにあまった商品の写真を提供していただいた。これは「環境」のドリンク商品で、1本918円で販売されている。約150本ほどあり、これだけで約14万円分になる。このように、会員が大量に買い込んだ15万円分の商品の多くが、部屋のいたるところにたまっていくという。
劣悪な環境にもかかわらず家賃は4万5000円
こうした実態について、一般的に想像される「シェアハウス」とのギャップに驚く方が多いのではないだろうか。私の感覚では、シェアハウスというよりはタコ部屋という表現がふさわしかった。
ここに限らず、「環境」の物件では総じて通常では考えられない人数を住まわせている。私の取材では6畳ワンルームに3人、20畳1Kに5人、シェアハウスの15畳の部屋に5人という例があった。20畳1Kに5人のケースでは、3段ベッドと布団2組で生活しており、布団を敷くと足の踏み場がなかったという。
毎日のように勧誘を行っている住民が帰ってくるのは深夜23時過ぎで、ほぼ寝るだけの部屋である。Bさんによれば、入会後に「師匠」と呼ばれる幹部から住む場所を指定されるため、断ることはできないそうだ。
これは脱会者のBさんから提供していただいた、シェアハウス内の写真だ。「環境」からの脱会者へのいやがらせが多発しているため、画像には加工を施している。多数の会員が生活しているため、一人あたりの自由なスペースは3畳ほどしかないという。収納スペースなども存在せず、写真提供者は約3畳しかない自分のスペースのほとんどを、持ち込んだタンスと荷物に使っていたそうだ。
前述の物件の場合、家賃は4万5000円ほど。師匠から「自己投資の15万円を捻出するため、安く住める物件がある」と勧められる。確かに都内の家賃としては安いかもしれないが、その住環境はあまりにも過酷である。
そして、物件のオーナーも師匠であるため、15万円の自己投資と合わせて毎月20万円近くを上納することになる。通常考えられる賃貸条件とはかけ離れており、物件を所有しているのでなければこのような貸し方はできないだろう。