【タイムライン】「消えたジャック・マー」の足跡
2020年10月
ジャック・マーは10月24日に上海で開催された公開討論会に出席。中国の金融システム規制を「老人クラブ」と呼んで中国の当局者たちの神経を逆なでしたものと思われる。
マーは、次のようにも述べた。「古い方法で未来を規制することはできない。中国にはシステミック・リスクはない。そもそも金融システムがないからだ。システムの欠如こそが(中国の)リスクだ」
2020年11月
10月のフォーラムの後、マーは中国の金融規制当局者たちから非公開(密室)の会合に呼び出しを受けた。その翌日の11月3日、当局は中国と香港で予定していたアント・グループのIPO(新規株式公開)を延期させた。
会合で何が議論されたのかは不明だが、ウォール・ストリート・ジャーナル紙によれば、アント・グループは、少なくとも344億ドルの調達が見込まれていたIPOに応募していた投資家たちに、応募資金を返金する計画だと述べた。上場予定時期のアント・グループの評価額は、3000億ドルを超えていた。
中国の当局者たちは、アント・グループが中国で独占的地位を築く可能性を懸念したとみられている。またマーの10月の発言も、事態を複雑にしたのではという憶測がある。
2020年12月
12月20日付のウォール・ストリート・ジャーナルは、マーが中国の規制当局に「国が必要とするなら」アント・グループの一部を譲渡すると申し出たと報じた。だが当局者たちはマーの申し出を退け、信用格付け事業の再編を要請し、さらに同社の一連の違反行為を摘発したと言われている。
アント・グループからの声明発表はあったものの、マーの姿が確認されることはなかった。同社は、規制当局からの要請に応えるために「調整」作業部会を設置しているところだと述べた。
12月27日、同社はCNBCに宛てた声明で次のように述べた。「当社は金融規制当局者たちの助言と手助けに感謝している。今回の調整はアント・グループにとって、事業基盤を強化し、規制を完全に順守しつつ成長を遂げていくための、そして引き続き社会の利益のため、小規模事業のための革新に重点を置いていくための機会である」
4日後の12月31日にはフィナンシャル・タイムズ紙が、マーが審査員として出演を予定していた起業家支援番組「アフリカズ・ビジネス・ヒーローズ」の最終回に参加しなかったと報じた。最終回の収録は11月だった。
マーは同番組の審査員ページ、および番組のPR動画の両方から削除された。
2021年1月
1月4日、アリババの広報担当者はロイターに対し、マーが同番組に参加しなかったのはスケジュールの調整がつかなかったためだと説明したが、それ以上のコメントは控えた。