<2カ月にわたって公の場に姿を現さず、ツイッターも更新していないアリババ創業者に何が起こっているのかをめぐり、憶測が飛び交っている:イワン・パーマー>

中国の電子商取引大手アリババと傘下の金融会社アント・グループの創業者である馬雲(ジャック・マー)が行方不明になっている──複数のメディアがこう報じたことを受けて、ソーシャルメディア上では、米在住の中国人不動産王が「マーは殺されるか収監される」と予想した動画が拡散されている。

Ant Financial Services Group
写真=iStock.com/xcarrot_007
中国の電子商取引大手アリババ傘下の金融会社アント・グループ

500億ドルを超える純資産を保有し、かつては中国の富豪ランキングのトップに君臨したマーは、ここ2カ月ほど公の場所に姿を見せていない。審査員として出演もしていた起業家育成コンテスト番組「アフリカズ・ビジネス・ヒーローズ」も、11月に行われた最終回の収録には参加せず、代わりにアリババ幹部の彭蕾(ルーシー・ペン)が代役を務めた。

英フィナンシャル・タイムズ紙は、マーの番組降板は「スケジュールの調整がつかなかったため」と報道したが、同番組の最終回に出演したある起業家は、「中国ではジャック・マーの周辺で何かが起きているようで、代わりの人物(ペン)が出演した」と述べた。

金融規制の批判が原因か

マーが「行方不明」になっていることには、彼が2020年10月に上海での演説で、中国の金融規制当局を「老人クラブ」と批判したことが関係しているのではないかと言われている。彼は上海の会合で、「現在の金融システムは産業化時代の遺物だ」と批判。「私たちは次の世代と若い人々のために、新しいシステムをつくらなければならない。現在のシステムの改革をすべきだ」と主張した。

そこで改めて注目されツイッター上で拡散されているのが、2019年9月に収録されたあるインタビュー動画だ。インタビューを受けているのは、中国指導部の汚職疑惑を暴露し、2014年に国外逃亡した不動産王の郭文貴。金融メディア「リアル・ビジョン」のインタビューで2019年9月にアリババの会長を退いたジャック・マーの今後について聞かれた郭は、「道は2つしかない」と指摘している。「中国の大富豪の末路は、収監か死。そのいずれかだ」と語った。インタビューを行ったカイル・バスはこう聞き返した。「つまりマーは刑務所に行くか、殺されるかだ、ということですね」

郭はさらに、アリババ傘下の民間金融会社アント・フィナンシャル(現在はアント・グループ)が中国政府にとって「大きな問題」を引き起こしていると指摘した。同社は中国の銀行制度に打撃をもたらしており、中国政府としてはアントを「なくしたい」のだと述べた。