「知識量や処理能力」から「思考力や記述力」に舵切り
2021年度の大学入試から、センター試験が廃止され、大学入学共通テストが導入される。入試改革の背景には、AIの進化や急激に進むグローバル化など、近年の日本を取り巻く社会環境の変化があげられる。
これまでの学校教育で重視されていた知識や技能は、やがてAIが代わりにやってくれるようになる。それよりもこれから必要になるのは、人間にしかできない思考力や表現力、判断力だ、というのが主な趣旨だ。その考え方自体はまっとうだと思う。だが、一昨年土壇場で英語の民間試験の活用が見送られたように、いまだ入試改革は混乱が続いている。
そんな大学入試の動向を固唾をのんで見守っていたのが、私立中高一貫校だ。もともと麻布中や栄光中といった一部の難関校では、思考力や記述力を求める問題を出題していた。それがここ数年、同じ難関校でも知識量や処理能力の高さを重視していた学校が、思考力や記述力を問う入試問題へと舵を切り始めているのだ。
たとえば開成中の理科入試は、これまでは知識型で難関校の入試のわりには簡単と言われていた。ところが、昨年度の入試では、統計の処理が必要な問題が出るなど、判断するための材料を自分で整え工夫する力が求められるようになった。
また、医学部進学が多い、女子最難関校の桜蔭中の算数入試といえば、膨大な量の問題をいかに早く正確に解けるかという処理能力の高さが求められていたが、ここ2~3年で思考力を問う問題も見られるようになった。同じく女子難関校の女子学院中の国語入試は、これまで記述はほとんどなかったが、昨年度の入試では表現力を問う記述問題が出題された。
こうした変化の背景には、やはり大学入試改革の存在がある。
大学進学実績をつけたい「中堅以下」
毎年多くの受験生を集める人気の難関校でさえ、時代の変化を感じ、新しい入試スタイルに変えつつあるのだから、それ以外の学校はさらに新大学入試を意識せざるを得ない。私立には各学校に建学の精神があり、本来であればそこに魅力を感じて入学するものだ。
そうは言っても、大学進学実績が学校の人気を決めるというのも現実。特に少子化が加速する今、数少ない子供たちになんとか自分たちの学校に入ってもらおうと、中堅校や底辺校は生き残りに必死だ。生徒を増やすためには、大学進学実績を上げていくしかない。