大学入試対策が、学校のレベルアップにつながる

そこに早く目を付けたのが、公立中高一貫校を受検(※適性検査問題による選考は、受検という名前になります)する子の受け皿を買って出た中堅以下の私立中学だ。東京都に公立中高一貫校が次々に誕生した15年前は、「ダメもとで受かればラッキー」くらいの気持ちで受検するケースが多かったが、今は「受検」に必要な知識やテクニックを教える塾も登場し、そこでしっかり対策をとってから受検に挑む家庭が増えている。単なる記念受験ではなくなってきたのだ。

とはいえ、毎年、平均倍率6~7倍の狭き門であることには変わりない。残念ながら不合格になった子供たちをターゲットに始まったのが、中堅以下の学校の適性型の入試だ。当初は「これって適性型入試って言えるのかな?」と首をひねるような“適性型風”のものも多かったが、年々研究を重ねていくうちに問題の質もかなり上がってきたように感じる。

また入学後も、思考力、記述力を高める授業を実践し、入試に実際の授業の中身が伴うようになった。公立中高一貫校に向けた対策で、思考力、記述力が鍛えられた受験生が集まったことで、レベルアップにつながった学校もある。

これまでは生徒確保のための手段として適性型入試を行っていたが、今後は大学受験対応の入試として注目される学校も増えてくるだろう。新しい大学受験に対応できる力があるか否かが、今後の中学受験における学校選びのポイントになるに違いない。

東京大学安田講堂
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大量暗記・パターン学習では通用しなくなる

中学受験に塾は不可欠と言われるが、集団授業を基本とする大手進学塾を中心とした今の中学受験では、どうしても知識やテクニックの指導になってしまいがちだ。近年、家庭教師として受験指導をしていて感じるのは、塾が指導している内容と実際の入試の中身が乖離かいりしていることだ。

多くの受験生は、大手進学塾の指導の下、受験勉強を進めていく。すると、大量の暗記やパターン学習が身についてしまい、今の時代に必要とされる思考力や判断力、記述力を養うことができない。

だが、学校が求めているのは、それらの素地を持った子供たちだ。なぜなら、そういう子は物事に対して興味・関心を持ち、自ら考え、学ぶ姿勢が備わっているから。そして、そういう子こそ、新しい大学入試では強く、結果、学校の進学実績にもつながっていく。

これからの中学受験に思考力や記述力が求められるようになることは、塾側ももちろん分かっている。だが、これまでの指導をガラリと変えるのは、現実的に難しい。塾で学ぶ知識量は若干減るかもしれないが、大きくは変わらないだろう。それならば、どのように受験対策をしていけばよいのか?