2021年は労働環境が大きく変わる
2021年を迎えるにあたり、600社以上の企業の「働き方改革」を支援してきた立場から見える「ビジネスパーソンの未来」とはいかなるものか──。
今後はますます雇用の流動化が進み、新卒で入社した会社でキャリアを終えることはレアケースになる。そして、専門性を活かして場所を選ばずに活躍できる人だけが成功する。望むと望まざるとにかかわらず、そういう傾向がますます強まることはまず間違いない。
昨年『AI分析でわかったトップ5%社員の習慣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を上梓したところ、ビジネスパーソン中心に大きな反響を得た。
クライアント企業25社で「トップ5%」の人事評価を得ている社員の行動を分析し、共通する特徴を明らかにしようと調査を重ね、定点カメラやICレコーダーの記録、メールの履歴などをAIで解析。「その他95%社員」との行動習慣の違いを明らかにして、その結果を書籍化したものだ。
意外だったのは、コロナ禍で突然のテレワークに直面した20代を中心に、若い世代が強く反応したことだ。
彼らは上の世代を見ている。「このままこの会社に居て、自分には未来があるのだろうか?」と、真剣に悩んでいるのである。
自社にロールモデルがいない。あるいは、未来が期待できない。ならば……と各企業の「トップ5%社員」に学ぼうというのだ。あるいは、そのうえでもっと自分を成長させられるところに新天地を求めたい、というのだ。
20代で未来は変わる
彼らの姿勢はおそらく正しく、今後は29歳までに自分をいかに磨くかで、40歳以降のキャリアが大きく変わってくる。私自身の体験を通しても、そうした変化が進んでいることを強く感じる。
社会人になった20年前。当時の私は、典型的な日本の古い体質の大手企業に就職した。そこでは「長く働くこと」が美徳とされ、時に徹夜作業をすると同情され評価もされた。目の前の仕事を必死にこなすことで技能が磨かれて、上司の言うとおりに実直に働いていればキャリアを拓くこともできた。上司に気に入られれば、3年に一度の人事異動発令でステップアップし、それがキャリアアップになったのである。
尊敬する経営者にも、若い時分はモーレツに働き、努力と成果を積み重ねて出世レースを勝ち抜いた方が多かった。その背中を追って、私も寝る間を惜しんで働き続けた。
ところが──。29歳で心と体のバランスを崩し、働くことができなくなってしまった。
無制限に働いて成果を出し続けることは限界だと自覚し、そこから「短い時間で成果を残す働き方」にシフトした。無駄なことをやめて成果につながる作業に全集中した。体力勝負でやみくもに働くのではなく、目的を意識して内省しながら仕事のやり方を変化させるようにしたのである。
体を壊したことをきっかけに、最初の会社を辞めて外資系通信会社に転職。のち起業を経て、さらにマイクロソフトへ転職することになったのだが、「短い時間で成果を残す働き方」の積み重ねが偶然のチャンスを引き寄せ、マイクロソフトの役員、そして現在のキャリア(2つの会社の代表)へと私を導いた。
現在は、週休3日30時間労働を貫いている。働き方を自分で決め、人に左右されない生き方を実現することが可能になっている。
振り返ると、その都度修正を繰り返す働き方にシフトしたことで、40代のいま、自由と責任を得ることができている。あのまま最初の企業で滅私奉公を続けていたら……と想像すると、恐ろしいものがある。