※本稿は、ソフィア・アクセルロッド著、綿谷志穂訳『赤いライトで朝までぐっすり 赤ちゃん寝かしつけの新常識』(東洋館出版社)の一部を再編集したものです。
朝5時に起きた赤ちゃんを、もう一度寝かせるのは難しい
「子どもが早朝に起きてしまい、困っている」という話をよく聞きます。家族全員が朝5時に起きることを、仕方のないことと受け入れてしまっている家族も多いです。でも、そんなことはないんです!
朝5時に起きて1日をはじめようとする赤ちゃんを、もう一度寝かせるのは難しく、あきらめていっしょに起きるという方も多いでしょう。でも、その努力は残念ながら逆効果です。赤ちゃんの要求に応えつづけるのは、朝5時起きの体内時計を強めることになります。
体内時計に影響を与える「ツァイトゲーバー」(ドイツ語で「時間を与える者」の意味)の中で、最大のツァイトゲーバーは、光です。朝起きてカーテンを開けると、目の奥にあるipRGCという特別な細胞が光によって活性化され、光の情報を脳の親時計に伝えます。
ちなみに、ipRGCは視覚とは何も関係ありません。目の見えない人も、多くの場合、ipRGCは機能していて、正常なサーカディアン・リズム(※)で行動しています。
※体の生理的なはたらきを司る、約1日周期のリズム。ラテン語で「約」を意味するcirca(サーカ)と、「日」を意味するdiem(ディエム)に由来している。
ipRGCから光の情報が送られてくると、親時計は1日がはじまったことを知ります。時計はリセットされ、そこから24時間をカウントします。
体内時計をサーカディアン・リズムに合わせることを、「同調」と言うのですが、よい同調のためには、光が欠かせません。
2.光の強さ
3.光の色(波長)
この3つの点が重要になってきます。
寝つきを悪くする「青い光」
光にはさまざまな波長があり、波長によって色も変わります。虹が7色に見えるのは、そのためです。けれど、日光に含まれる波長(光の色)の割合が1日を通して変化するということは、あまり知られていません。
朝の日光は、青の光が多く、夕方には青が減少して、赤が増加します。赤がもっとも多くなったときに起こるのが、夕焼けです。青い光はほとんどなくなり、世界を赤く染め上げます。
いまでは、この青い光こそ、体内時計と睡眠にもっとも大きな影響を与えるということがわかっています。夕方に強いオレンジ色の光を2時間浴びるより、同じ時間帯に弱い青い光を2時間浴びるほうが、睡眠にはずっと悪い影響が出ました。
目の奥にある特別な細胞ipRGCが青い光に強く反応するため、その情報を受け取った脳の親時計のニューロンも活性化します。そうすると、睡眠をうながすホルモンであるメラトニンが減少してしまうのです。メラトニン濃度が上昇するのは光がないときだけなので、日が沈んだあとは自然に増加するのです。