明るさが1000倍になっても人間はまったく気がつかない
その答えは、体内時計と睡眠に光が及ぼす大きな影響について、あまり気づかずに暮らしていることに関係してきます。どちらも、わたしたちが光の強さのちがいにとても鈍感なのが原因です。
“Color Science”(色の科学/ヴィシェツキ&スタイルズ共著/未邦訳)では、人間が光の強さのちがいをどれくらい過小評価しているかを正確に調査しています。そこでは、明るさが1000倍になっても(月の光とオフィスの差など)、人間は10倍ほどのちがいしか感じないと結論づけられました。そして、バスルームやキッチンの照明と曇りの日の明るさといった10倍程度のちがいには、人間はまったく気がつかないのです。
こうしたプロセスは、「適応」といいます。適応のおかげで、光の強さが大きく異なる場所を、行ったり来たりできるという利点もある一方、人工的な照明があふれている現代では、問題も生じます。日々接する光の強さの変化を感じることができないため、「光が睡眠をさまたげている」という考えを、無視してしまうのです。
青い光が含まれていれば、「朝が来た」と感じてしまう
一方、脳そのものは、光の強さを正確に感じていて、忠実に反応します。青い光が含まれていれば、「朝が来た」という信号としてとらえます。強さのちがいにも敏感です。その感度はけた外れです。ろうそくの光のような、青い光がわずかしか含まれない弱い光でも反応し、ふつうのリビングの照明のような光では、時差ボケ並みの強力な反応をしてしまうのです。
これで、赤ちゃんのためにすべきことがはっきりしましたね。赤ちゃんに眠っていてほしい時間帯は、たとえわずかでも、青い光を存在させてはいけないのです。
夏には、午前4時頃に日が昇ります。朝4時に寝室に日光がさしこむと、赤ちゃんの脳はすかさず反応します。体内時計は、朝日を「起きて!」の合図だと受け取ってしまいます。
どうすれば、これを防げるのでしょう?