しつこく聞くとハラスメントになる可能性も
「えーと、彼氏はいない、ですかねえ……(彼女はいるけど)」などと言葉を濁された際の背景には、このような事情がある場合も考えられる、というわけです。
ただ、思わず「彼氏/彼女いるの?」と聞いてしまったとしても、さらに話題を深く掘り下げようとしなければ、あまり大きな問題にはならないかもしれません(そこは察してよという信号を素早くキャッチすることが、現代社会では必須のスキルといえるでしょう)。確かに当事者にとっては、その時ヒヤッとするかもしれませんが、その後同じような話題が振られなければ、「わかってくれている人なのかな」と受け止める場合もあります。
しかし、答えづらそうにしている/あまり反応をしない人に対して、「その人はどんな人なの? どこで出会ったの? 写真見せてよ」などと畳みかけると、ハラスメントの色合いが濃くなってきてしまいます。
相手がLGBTでなくてもパワハラに
こうした言動はセクシュアルマイノリティに対するものや、SOGIに関連する場合のみがハラスメントになるわけではありません。
2020年6月から施行されたパワーハラスメント防止法が定める、パワーハラスメントの六つの類型の一つに「個の侵害」と呼ばれるものがあります。厚生労働省はこれまで、この「個の侵害」について、「交際相手について執拗に問われる」という例を挙げ、防止を呼びかけてきました。厚生労働省の啓発サイトである「あかるい職場応援団」では、「業務上の必要もなく私用や私的な内容を聞き出そうとする」「結婚等のプライベートな事柄について執拗に触れる発言」は「『個の侵害』に該当する」とされています。業務上必要のないこのような発言は、誰に対するものであれ(初対面であればなおさら)、今後さらにパワーハラスメントと見なされていくでしょう。
もちろん、このような話題が一切ダメだということではなく、本人が自発的に話した内容について盛り上がることは問題がない(業務上差し障る私語でないなら)でしょう。また、過去に本人から聞いていた内容を、その人が共有している範囲の人とともに、楽しく話す際も問題がない場合が多いでしょう。ただ、その話題を共有していないかもしれない人がその場にいる場合や、本人が過去に話した内容に気まずそうであれば、やはりその会話は避けた方が無難です。