先ごろ、ネットニュース編集・PRプラニングの第一線から身を引き、「セミリタイア宣言」をしたライターの中川淳一郎さん。「このまま自分がウェブメディア編集の世界に居座っていたら、老害をまき散らして、若者に迷惑をかけてしまうのではないか」と考え、自ら進んで「世代交代」を起こすことにしたと語る。その真意とは──。
年長者
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年長者が持っておくべき「引き際」の意識

2020年8月31日にセミリタイアをしてから、2カ月が経とうとしている。実に穏やかな心持ちだ。後悔は一切ない。

これまでの主業務だったネットニュース編集者、そしてPRプランナーの仕事を離れて、今後はライターとして細々と生きていこうと決めた。そう考えるに至った背景についてはこの連載でも過去に述べたが、大きな理由のひとつは「老害として周囲に迷惑をかける前に自らサッと身を引き、後進に道を譲る」ことが、年長者としての作法だと悟ったからだ。

そこで今回は「世代交代」という視点から、改めて年長者が持っておくべき「引き際」の意識について考えてみたい。

身体能力の衰えが成績で端的に表れるアスリートの世界には、世代交代のタイミングが明確に存在する。だが、その他の身体能力がそれほど重要ではない職業においては、そのタイミングが曖昧である場合が多い。

上が詰まっていると、若手が苦労する

お笑い芸人の世界を見るとわかりやすいが、「BIG3」とも評されるビートたけし、タモリ、明石家さんまが頂点に長らく君臨し続けている。1980年代からトップを走ってきた彼らはいま、60代半ば~70代だ。また、その下の世代、50代後半のダウンタウンやウッチャンナンチャン、そして40代~50代前半のいわゆる「ボキャブラ世代」が、現在のテレビ番組をほぼ牛耳っている。

最近は「お笑い第七世代」と呼ばれる一部の若手芸人たちが気を吐いているが、一視聴者の私からすると「上が詰まっているから、若手は大変だろうなぁ」と思わずにはいられない。

一方、俳優であれば年齢なりの役柄が求められるため、お笑いの世界ほど「上が詰まっている」状態にはなっていない。まぁ「高齢者役」の枠にも激しい競争があって大変だろうが、これはこれでお笑いとは異なり、健全な状態といえるのではないか。