無住寺院・神社の宝物にGPS装置の設置を検討するべき

さらに2000年代には、別の無住寺院C寺で仏像(脇侍)が盗まれた。本尊は大丈夫だった。どうやら本尊は大き過ぎて、運び出せなかったようだ。本件は後日、犯人が逮捕された。

なんと、その窃盗犯はA寺の檀家であった。A寺が無住のC寺を兼務していることを知った檀家が犯行に及んだのだ。

仏像だけではない。

先月には千葉県内の無住の神社で、社殿の銅板の屋根が剝ぎ取られているのが発見された。銅板は高値で取引されるため、犯人は換金目的で犯行に及んだと思われる。盗まれた銅板は約300枚、時価で6万円に及ぶ。千葉県内では今年になって同様の事件が相次いでいるという。

所轄官庁である文化庁は今年に入って「盗難を含む所在不明に関する情報提供について 〜取り戻そう! みんなの文化財」と題するホームページをオープン。追跡調査に乗り出している。

ホームページの開設はそれだけ盗難事例が多いことを示唆するものだ。同サイトによると、国指定の国宝、重要文化財で、社寺所有の行方不明が37件。うち盗難と思われるものが23件と報告している。

多くが地方都市の人口減少、高齢化に伴う地域の監視の甘さの隙をついた犯行である。無住の寺院や神社は、防犯に充てる資金そのものがない。住職や神主が常駐する寺社であっても、多くがセキュリティシステムを導入するほどの余裕資金はないのが実情だ。だから、近年、全国の寺社で賽銭泥棒が相次いでいる。

包括法人である宗門や神社庁も各寺院、神社に防犯システムを提供することは資金的にも制度的にも不可能だ。結局は、地域住民・檀家による監視しか、今のところは選択肢がないのが実情だ。

文化財の保護は国や自治体の責任でもある。しかし、指定文化財以外の貴重な宝物も無数にあり、全てを公的機関が守っていくことは不可能だ。国が喫緊に取り組むべきは、仏像類が盗まれないような社会――つまり人口減少、少子化、地方創成、貧困などの対策だろう。

一方で寺院や神社はどうすべきか。無住寺院・神社の宝物にGPS装置を設置したり、レプリカを据え置くことを検討したりすることも視野に入れるべきかもしれない。各地にはバブル期にできた多くの箱物――美術館や博物館などがあるが、そこに寄託する仕組みなども整えるべきだ。

現状を放置すれば今後、無秩序に大量の文化財が散逸してしまうことになってしまうことだろう。

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