欧米に比べて、LGBTQ(性的少数者)に対する法整備や社会保証制度が遅れている日本。ジャーナリストで僧侶の鵜飼秀徳氏は「仏教は性差にかかわらず誰もが救いの道が開かれていると説いていますが、現実的には同性愛の夫婦は一族の墓に入ることが難しい。仏教界では最近、こうした矛盾に関して議論が活発化し、LGBTQを積極的に受け入れる寺院や僧侶も現れた」と指摘する——。
LGBTQの人への差別は「死後」も続いている
仏教界でにわかにLGBTQ(性的少数者)をめぐる議論が活発化してきている。
11月5日、59の宗派などで構成する伝統仏教界の連合組織・公益財団法人全日本仏教会は、公開シンポジウム「〈仏教とSDGs〉現代社会における仏教の平等性とは 〜LGBTQの視点から考える〜」を開催した。
SDGsの具現化を目指し、企業や自治体のLGBTQへの社会的な取組みを背景にして、保守的な日本仏教界が重い腰を上げた形だ。だが、家墓の承継や戒名など、江戸時代から続く慣習を変えていくのは一筋縄ではいかないのも事実だ。
日本は欧米各国に比べて、LGBTQに対する法整備や社会保証制度が遅れている。同性婚は法律上まだ認められておらず、財産相続をはじめ、さまざまな障壁が立ちはだかっているのが現状である。
「今」のことだけではない。LGBTQの人への差別は「死後」も続いているのだ。
「人間社会が始まってから、常に同性愛はありました。仏教は性差、社会的地位、制度などにかかわらず、誰もが救いの道が開かれると説いています。しかし、仏教界ではLGBTQについて、これまで(タブー視して)公には語ってきませんでした。平等であるべき仏教界の教えと、実際のあり方が違っているのです」
全日本仏教会の戸松義晴理事長はシンポジウムでこう語りかけた。日本仏教の連合組織のトップが仏教界のLGBTQ問題について公に言及し、これまでの仏教的慣習を問い直すのは珍しいことだ。
ここで少し歴史をさかのぼって問題点を整理してみよう。