仏教の教えには、そもそも性の差別は存在しないが……
古代インドで仏教をひらいたお釈迦さまは、身分にかかわらず、誰でも悟りの境地に達することができると説いた。お釈迦さまは女性の修行僧も認めていた。そもそも仏教の教えには、性の差別は存在しないのだ。
しかし6世紀、仏教が日本に入ってくると、状況が変わる。土着的な神道と、外来の仏教とが混じり合う(神仏習合)ことが契機になり、性による区別を始める。比叡山や高野山など仏教聖地で女人禁制が敷かれるようになった。
江戸時代に入り、檀家制度が導入されると庶民への弔いが一般化する。そこでは、性の区別がより明確化されていく。
例えば戒名。戒名(位号)は基本的には男女分けだ。宗派にもよるが浄土宗の場合、男性なら「信士」「居士」など、女性なら「信女」「大姉」などだ。LGBTQを考慮した戒名はない。
檀家制度の下では、「イエ」を単位として、弔いが継承されていく。つまり「先祖供養」である。男系長子が菩提寺の檀家になり、墓や仏壇を継承していく。祭祀の男系長子継承の慣習は今でも続いている。
LGBTQの割合は8.9%、うち35%がカミングアウト
近年まで、現場の寺院でLGBTQの話題が持ち出されることはまずなかった。ところが近年、SNSの普及なども相まって、LGBTQの権利が社会で共有されはじめると、仏教界にも変化の兆しが表れる。
近年、同性やトランスジェンダー同士の婚姻を承認し、独自の証明書を発行する自治体独自の「パートナーシップ宣誓制度」が広がり始めている。2015年11月に東京都渋谷区と世田谷区で同時に施行されたことがきっかけだ。私が住む京都市では本年9月から始まった。今月5日には群馬県が茨城、大阪に続き、3例目の導入を発表している。
企業などでも、LGBTQへのガイドライン策定が進むなど、理解を深める取り組みが広がりをみせている。
電通ダイバーシティ・ラボによれば、LGBTQの割合は8.9%。これは、ほぼ左利きの人口に匹敵する。うち35%がカミングアウト(実名で自分のセクシュアリティを他人に伝えること)しているという。つまり、僧侶や檀信徒の中には一定数LGBTQが存在する。
仏教界のLGBTQへの対応は「待ったなし」といえる。