長崎県対馬の菩薩像を盗み、勝手に金ピカ化をもくろむ「隣国」の常識
仏像、仏具など寺社由来の文化財の盗難が相次いでいる。
背景には地方都市の人口減少に伴う寺院の無住化や、防犯設備の不備などがある。コロナ禍における法事、祭事の中止によって地域の監視の目が届かないことで、今後ますます盗難が増えていく懸念もある。
盗まれた寺宝は古美術商に流されたり、海外のオークションにかけられたりして、二度と戻ってこないケースが多い。寺宝は国民共有の財産である。「まったなし」で国や自治体と寺社が連携して防犯する仕組みを整えなければならない時機にきている。
九州と韓国の中間にある長崎県対馬。
高度成長期の1960年代にはピーク人口の7万人を数えたが、以降減少傾向をたどり、2015年は半減以下の3万1000人。2020年現在では2万8000人前後とみられ、2060年には1万500人前後になると推計されている。
過疎化と海外からの人の出入りの増加生んだある事件
一方で、東日本大震災以降は韓国からの観光客が急激に伸び、大型ホテルも建設されるなど、観光が島の経済を支えている。過疎化と海外からの人の出入りの増加が、ある事件を生んだ。
2012年10月8日、島にある臨済宗南禅寺派の古刹、観音寺から14世紀に朝鮮半島で制作されたとみられる観音菩薩像(座高約60cm、長崎県指定有形文化財)が、盗まれた。同時に、同島の海神神社の銅造如来立像(国指定重要文化財)や、多久頭魂神社の大蔵経(県指定有形文化財)も盗難に遭った。犯人は韓国人窃盗団であった。
翌2013年に窃盗団は韓国内で逮捕される。海神神社の銅造如来立像は一部破損した状態で回収され、日本に返還された。多久頭魂神社の大蔵経は犯人によって捨てられたとみられる。
そして、観音寺の観音菩薩像をめぐっては、韓国瑞山市にある浮石寺が「そもそも観音寺の観音菩薩像は14世紀に自寺で造られ、(日本の)倭寇によって奪われたもの」として、所有権を主張しはじめた。現在も韓国の高裁で審理が続いている(同寺が2016年4月に菩薩像を保管している韓国政府を提訴。一審の大田地裁は、韓国政府に対し浮石寺側への引き渡しを命じたが、韓国政府は判決を不服として控訴)。