10月1日から「Go To トラベル」での東京発着が解禁される。京都在住のジャーナリストで僧侶の鵜飼秀徳氏は「取材のためこの半年間で47都道府県を訪れたが、旅先で入店拒否を受けることが10回以上あった。10月以降、東京人を見かける機会が増えれば、さらに多くの店で入店拒否がよりシビアになる恐れがある」と指摘する——。
東北のある店で貼られた県外入店拒否の貼り紙
撮影=鵜飼秀徳
東北のある店で貼られた県外入店拒否の貼り紙

秋田の居酒屋「……どちらから?」「ご入店は厳しいですね……」

私は仕事柄、月に2度ほど全国の寺院を回って、取材を続けている。コロナが拡大局面にあるこの半年間、47都道府県すべてを訪れ、「ひとり飯」をしてきた。むろん感染症対策には万全を期している。

先日、秋田県のとある小都市を訪問した時のことだった。夕食時、宿泊先のホテルから紹介された居酒屋に入ろうとした。すると2人組の男性が店から出てきて、入れ違いでのれんをくぐった。店は地元の常連客でにぎわい、3分の2ほどの席が埋まっている。

「1人ですが、空いていますか」

店員が怪訝そうにこちらを見る。

「……どちらからいらっしゃいました?」
「京都です」
「今出ていかれた方は大阪の方でしたが、お断りしたんですよ」
「京都もダメですか?」
「うーん。ひとまず、こちらの質問用紙にご記入いただいてもよろしいでしょうか」

店内では地元常連客が大騒ぎ、私はひとり入り口に近い席

渡された紙には10項目ほどにわたって現住所、氏名、連絡先、直前の滞在地、今後の予定などを書き込むようになっている。

「京都の感染者数は毎日どれくらいですか?」
「しばらく旅しているので直近の数字は分かりませんが、10人前後ではないでしょうか」
「ご入店は厳しいですね……」
「(近くに泊まっている)○○ホテルからこの店を紹介されて来たんです。ホテルに聞いたら、チェックインの際に検温などをしっかりやっているので、入店拒否されることはないと言われました。この店を出されてしまうと(この辺りに飲食店はほとんどないので)、夕食抜きになってしまいます」
「……じゃあ、特別にいいですよ」

案内されたのは入り口に近い席だった。店内では常連客が大騒ぎしている。私はひとりなので誰とも話すわけでもない。どちらを警戒すべきなのか。地元民が安全で、他県の人間が危ない理由を尋ねたい気にもなったが、店側に合理性を求めても仕方がない。