10月1日から東京人への露骨な入店拒否が増える
だが、Go To トラベルキャンペーンの利用者の立場では、現地で入店拒否されては困惑するばかりである。特に観光地よりも地方の小都市に赴くことの多い私はなかなか大変だ。どうにかしてほしいが、これは店の責任ではなく、あくまでも制度の問題である。
ちなみに本稿は沖縄の石垣島から書いている。離島は内地と違い、コロナ対策はより慎重になるべきである。一人でも感染者が出れば、たちまち医療機関は破綻する可能性がある。だが、店ごとの対応にはかなりばらつきがあった。
コロナを恐れて長期休業している店、他県からの客のみを拒否する店、逆に呼び込みまでして客を集める店……。それぞれの店がバラバラに判断しているのだ。これではコロナの感染予防と地元経済の両方に効果がないだろう。
10月1日から東京都発着のケースがGo To キャンペーンの対象になる。東京人を見かける機会が増えることで、むしろ入店拒否がよりシビアになる恐れがある。もともと、県外客を排除していた店だけでなく、これまで受け入れていた店が「地域の目」を気にして、排除に傾くことも考えられる。
外国人差別が始まり排除の論理が広がれば、地域ブランドの地盤低下
地方都市における東京への警戒心は極めて強い。私もしばしば地方都市の飲食店で、「最近、東京に行かれたことは?」などと聞かれている。
また、10月からは留学や長期滞在の外国人の入国の緩和措置が実施されるが、こちらのケースはもっと心配だ。本格的な外国人差別が始まりやしないか。
そもそも「地域ブランド」を支えてきたのは、東京人やインバウンドらを含めた県外客である。全国で排除の論理が広がれば、地域ブランドの地盤低下を招きかねない。
一方で、東京や外国からの一見客を歓迎する店も出てきそうだ。それは、ムラ社会とは密接な関係がないファミリーレストランや居酒屋チェーンの類いだろう。
このままでは地元店と全国チェーンの店との経済格差が広がり、結果的に前者は駆逐されてしまう恐れもある。すると、地域社会はますます疲弊してしまうだろう。
ただし、「ムラ社会」は弊害だけではない。コロナ感染の防波堤になってきた可能性はあり、一概には否定できない。前述したように、相互扶助の仕組みもある。
全都道府県を回ってみて、Go To トラベルキャンペーンの受け皿の体制は、まだまだ未熟だと感じた。排他的な「ムラ社会」を、どう解きほぐして、受け入れ体制を整えていくか。これは菅義偉新政権の課題であると同時に、地方自治体や地方議員、あるいは地方商工会などの役割でもあると感じた。