「同性愛者でも(僧侶として)大丈夫でしょうか」

シンポジウムにはLGBTQの啓発活動に関わる3人が登壇した。

そのひとり、浄土宗僧侶の西村宏堂さんはメイクアップアーティストとしても国際的に活躍している人物だ。まさに西村さんはLGBTQの当事者でもある。

メイクアップアーティストとして活躍する西村さん
写真=全日本仏教会公開シンポジウムより
メイクアップアーティストとして活躍する西村さん

西村さんはシンポジウムで、自分自身のセクシュアリティに苦しみながら修行に入ったことや、修行仲間からLGBTQを蔑むような発言を受けたことなどを赤裸々に明かした。

「僧侶の戒の中には、装飾品や化粧をつけてはいけない、という内容のものもあります。私が僧侶になることで仏教の秩序が崩れるのではないか、と悩みました」

西村さんは修行中、ある高僧に「同性愛者でも(僧侶として)大丈夫でしょうか」「メイクもハイヒールも好きなのですが……」と打ち明けたという。

すると、「同性愛者でも問題ないですよ。教えが正しく伝わるなら、キラキラするものをつけても問題はないでしょう。みんなが平等に救われることのメッセージを伝えていってほしい」と促されたことで、救われたと明かす。西村さんは修行を終えた後は、僧侶兼メイクアップアーティストとして精力的に活動している。

西村さんのように、LGBTQの僧侶は決して少なくない。しかし、多くがカミングアウトできずに「我慢して」きたと思われる。

「戸籍上女性だが男性として生きてきた。戒名は男性用にしてほしい」

仏教界は極めて前時代的な文化・習慣が残る世界だ。「男僧・尼僧」という性差をはっきり分けてしまう呼び方や、男僧・尼僧とで儀式のやり方が異なるケースもある。

僧侶だけではない。檀信徒の中にも多くのLGBTQが存在する。近年、各地の寺にLGBTQに関する相談が寄せられてきている。特に、「戒名」は個(故)人のアイデンティティに関わる大事な問題だ。

戸松さんは、シンポジウムで戒名問題にも踏み込んだ。

「お坊さんが良い戒名だと思って付けても、LGBTQの当事者はそうは思っていなかったということもあるかもしれない」

例えば、「戸籍上女性として生まれたけれど、男性として生きてきた。だから戒名は男性につけるものにしてほしい」といったケースだ。だが、この場合、生前に住職や家族にカミングアウトすることが前提となる。

戒名だけではない。