すべては「10円シュークリーム」から始まった

シャトレーゼの創業は1954年、現会長の齊藤寛氏が今川焼き風のお菓子「甘太郎」の店舗を山梨県甲府市(旧紅梅町)に出店したことにさかのぼる。67年には名前を現在の「シャトレーゼ」に変更し、シュークリーム製造に乗り出した。ただ、当時はコンビニなどなく、駄菓子屋や青果店で菓子を売る時代だ。

YATSUDOKI「八ヶ岳南牧村契約農家のしぼりたて牛乳のカスタードシュー」(250円+税)
写真提供=シャトレーゼ
YATSUDOKI「八ヶ岳南牧村契約農家のしぼりたて牛乳のカスタードシュー」(250円+税)

冷蔵ケースのない売り場で生菓子をストックするにはどうすればいいか。そう悩んだ末に思いついたのが、1個50円が相場のところを5分の1の値段で売り出した「10円シュークリーム」だった。冷蔵ケースが必要ないほど、飛ぶように売れる商品としたわけだ。結果、「10円シュークリーム」は1日50万個を売り上げる人気商品となり、成長の足掛かりをつかんだ。

業界特有の弱点を突破した

75年には、首都圏を中心にフランチャイズ(FC)による洋菓子専門店を展開した。スーパーなどへの卸売りを進めていたが、そのさなかに主力の工場が火事で全焼してしまう。卸売り用の菓子が生産できずに苦しんだ状況から生まれたのが、問屋を介さず、自社工場でつくったものを店舗で直接販売する工場直売店だった。

85年7月、甲府市に実験店舗をオープンしたところ大盛況。翌年の工場直売店FC1号店(千葉県)の開店をきっかけに全国各地から出店の申込みが相次ぎ、今のようなロードサイドの郊外型FC店が完成した。

シャトレーゼの外観
写真提供=シャトレーゼ
シャトレーゼの外観

ケーキなどの生菓子の流通は難しい。鮮度が売りの商品だから作り置きはできないし、売れ残りは捨てるしかない。だが、製造数を絞れば、販売機会を失ってしまう。生菓子市場では、顧客の需要を読み切り、緻密な販売予測を立てることが最重要なのだ。

そうした市場で、川上から川下までを自社でまかなうことで、シャトレーゼは業界特有の弱点を突破したといえる。