不振にあえぐ業界で異例の快進撃
総合菓子メーカーのシャトレーゼが快進撃を見せている。主力事業の洋菓子チェーン「シャトレーゼ」は628店舗(2020年10月6日時点)を展開し、過去5年間で150店以上増やした。2015年には海外にも進出し、シンガポールを中心に80店舗を構える。
持ち株会社のシャトレーゼホールディングス(HD)の売上高(連結、2020年3月期)は前年度対比110%増の732億円。コンビニスイーツの波に押され、他チェーンや専門店が不振にあえぐ中でも着実に業績を伸ばしている。業界最大手・不二家が2019年12月期決算で減収減益を計上し、不採算店舗を大量閉店している状況とは対照的だ。
シャトレーゼは山梨県甲府市を発祥とし、これまでは都市郊外を中心に店舗を展開してきた。メニューはケーキをはじめとする洋菓子のほか、アイス、和菓子、ピザ、ワインなど400種類を超える。目を見張るのはその安さだ。年間500万個を販売する人気No.1ケーキ「スペシャル苺ショート」は300円(+税、以下同じ)、爆発的ヒットを記録したアイス「チョコバッキー」は1本60円だ。
品質にも自信を持っている。「バスク風チーズケーキ」などコンビニスイーツはたびたび話題になり、専門店を脅かしているといわれるが、シャトレーゼは「コンビニは競合相手ではない」(広報)と言い切る。なぜそこまで安くておいしいのか。
コストをそぎ落とした独自のサプライチェーン
その理由は、「ファーム・ファクトリー」と呼ばれる同社独自のサプライチェーンにある。
山梨県の白州工場を拠点に、素材の調達から生産、配送、そして直売店舗での販売までを自社で管理しており、本来なら市場に流通させる過程で発生する中間マージンやテナント料が要らない。このため相場よりも2~3割安い価格で商品を提供できている。
だから安くても品質は高い。牛乳は、山梨県と長野県にまたがる八ヶ岳にある契約牧場から仕入れており、水は甲斐駒ヶ岳のふもとに工場を構え、日本名水百選にも選ばれた「白州名水」を使用。卵や苺、和菓子に用いる小豆も全国の契約農家からそれぞれ仕入れており、加工はすべて自社工場で行っている。